(パーティー会場から離れた場所で彼女が探し物をしている)
あの……いきなりお声かけしてすみません。
お困りのようだったので、気になってしまって…。
どうかされたんですか?
『ピアスをなくした』…?
それは大変だ。
どんなピアスですか?
…分かりました。
すぐに
大丈夫ですよ。
私は獅子族……ライオンの亜人で、このパーティーの主催者です。
なので、私に任せていただければすぐ見つかります。
(彼女がやんわり断ってくる)
どうしても
あまり
でしたら、私一人でよければお手伝いしてもよろしいでしょうか?
お気になさらないでください。
私がやりたくたてやるんですから。
困った時はお互い様、ですよ。
どのあたりでなくしたか、見当はついてますか?
…なるほど…。
ちょっと失礼します。
(彼女の匂いを嗅ぐ)
私たち亜人は鼻がききます。
ピアスについてる
(匂いをクンクンして進む)
近いような気がします…。
あっ……あった!!
これで間違いないですか?
見つかってよかったです。
お礼なんていいですよ。
貴女のその気持ちだけで十分です。
『どうしても』ですか?
ん゛ん゛ー……だったら…。
今から少し時間をいただけますか?
貴女にどうしてもお伝えしたいことがあります。
いきなりこのようなことを申し上げるのは
私はこの見た目です。
人間からしたら、取って食われると感じるのでしょう。
私のそばから一歩、また一歩と離れていく。
亜人も同じです。
ライオンは百獣の王なんて呼ばれて人気があるくせに、獅子族の我々は見た目が怖いばかりで誰も寄り付かないんです。
ところが、貴女は違った。
私から離れることなく、微笑みかけてくれて、話もしてくれた。
これがどれだけ嬉しかったことか…。
それに、先程貴女の匂いを嗅がせていただいた時、頭の中が痺れるような感覚になったんです。
亜人には運命の相手がいるんですけど、出会える確率は限りなくゼロに近く、都市伝説として語られていて、信じている亜人は誰もいない。
私もさっきまでは全然信じていませんでした。
でも、今は信じています。
貴女が私の運命の相手だから。
心が……本能が叫んでいるんです。
貴女が欲しいと…。
ほんの少しで構いません。
私との将来を考えていただけませんか?
貴女に不自由な思いは絶対にさせないと誓います。
ただ、この見た目は変えられないので、そこは我慢していただくしかありませんが…。
少しでもいいと思っていただけたら、名刺のこの番号にご連絡ください。
私のプライベートナンバーなので、いつでも構いません。
どんなに忙しくても、すぐに会いに行きます。
貴女のためなら、どこへでも…。
『断ったら』ですか…。
それは悲しくなっちゃいます…。
とはいえ、貴女の思いを尊重して身を引いたりしませんよ。
何が何でも貴女を手に入れます。
私の持てる、地位や名誉、財力、そのほか全てを使って…。
なんてったって、”王”ですから。
欲しい物は奪ってでも手に入れます。
それでは、私はこれで…。
貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
最後までパーティーをお楽しみくださいね。