いちかの百合園
voice:いちかの百合園

発熱して情緒不安定になった彼女を優しく慰める年上彼氏

(寝息)すぅ…すぅ…

ん…重い…?
ぇっ…?
ちょ、ちょっと、どこで寝てるの。
僕の上で寝てるの分かってる?
ねぇ、起きてって。

…って、泣いてるの?
どうしたの?
怖い夢でも見た?
泣いてちゃ分からないよ。
どうしたの?

何でもないけど、涙が溢れてきちゃう?
悲しかったり、怖かったりするわけじゃないんだね?

ふむ……あっ。
ちょっとここで待ってて。
すぐ戻るからいい子で待っててね。

はい、お待たせ。
いい子で待ってたかな?
いい子♪いい子♪

じゃぁ、体温測ろうね。
何キョトンとしてるの?
体温計取りに行ってただけだよ。
だからすぐに戻ってきたでしょ?

あっ、こら!
逃げるなっ!
ったく…君はすぐ自分の都合が悪くなると逃げようとするんだから。
そんな悪い子は後ろから抱き締めの刑だっ!

(彼女を抱きしめてる状態/後ろから)
ほら、これで逃げられない。
もう観念して?
ん、いい子だね。

ちょっと脇開けて?
体温計入れるから。
はい、閉めて。
こら、脇を緩めて少しでも体温を低く表示させようとしない!
ったく…調子悪くても悪知恵だけは一人前以上に持ち合わせてるよね。
悪い子はギューの刑だから。

ん、測れたね。
ちょっと取るよ~。
あ~ぁ、やっぱり熱あるね。
結構高い。
辛いんじゃない?
大丈夫?

風邪かな?
流行り始めたってニュースでもやってたし。
とりあえず、冷えた体を温めないとだよね。
ホットココア、作ってあげるね。

はい、どうぞ。
アツアツだから、舌を火傷しないようにね。

どうした?
また泣き出して…。

危ないから、ホットココア貸して?

【カップをサイドテーブルの上に置く音】

僕の胸貸すから、いっぱい泣いていいよ。
君はがんばり屋さんで、辛い事も苦しい事も全部自分の中に閉じ込めちゃうの知ってるよ。
元気な時は頑丈な心の鍵でしっかり施錠されてるから、どんなことがあっても表には出て来ない。
だけど、こうやって病気になって、心が弱った時に、心の扉の鍵も壊れて、溜め込んでたものが一気に押し出してきちゃうんだよね。

どんなに辛い事や悲しい事があったとしても、僕や周りの誰にも悟られないように隠すのが君はとても上手。
いつも騙されちゃう。
『大丈夫?』って聞いても、君は絶対『大丈夫』としか答えない。
あまりにいつも通りすぎて、いつも一緒にいる僕ですら見逃しちゃう。
君は絶対心配させてくれない。
それが君のいいところでもあり、悪いところでもある。

一緒に住んでるんだよ?
君と付き合ってるのは誰?
そう、僕だね。
なら、少しくらい甘えてくれてもいいんだよ?
もっとわがまま言ってくれてもいいんだよ?
って言っても元気な時の君は甘えることが苦手だもんね。

ごめんって。
怒らないで。
本当に甘えてほしいと思ってるんだよ?
僕の方が年上だし。
少しくらい頼り甲斐ある男だって思ってもらいたいんだよ?
普段があまりに抜けてて頼りない感じになっちゃってるけど…。

今日は僕に甘えてくれていいよ?
何してもらいたい?
何されたい?

もっとギューってしてもらいたいの?
いいよ。
力いっぱいのギュー!!!

どう?
あっ、嬉しいんだね。
よかった。

ん?何びっくりしてるの?
何で嬉しいのに気付いたのかって?
君、嬉しい時って額をグリグリって擦りつけてくるんだよ。
気付かなかったの?

ちなみに、何でもないのに泣き出す時はだいたい熱が出た時が多いよ。
生理前は言動全てがとげとげしい感じだし、道に迷った時は一時停止が増えるんだよ。
君自身も気づいてないことだったんだね。
ふふふ、君の知らない一面を僕だけが知ってるのって、ちょっと嬉しいかも。

あっ、忘れてた。
これ付けておこうね。
おでこにひんやりシート。
冷たくて気持ちいいでしょ?

目も随分潤んできてるし、首から上全部真っ赤になってるから、熱かなり上がってきてるね。
冷えた一口ゼリー持ってきたから、これ食べて。
次はこの薬飲んで。
薬嫌いなのに、よくがんばって飲んだね。
えらい。えらい。

そろそろギューも終わらせてお布団に戻ろう。
ちゃんと布団被って。

君が寝るまで隣でいてあげるから、安心して寝ていいよ。
ん?
添い寝してほしいの?
いいよ。
じゃぁ、ちょっとお隣失礼しますよ。

トントンしてあげるから、寝ようね。
はい、トントン。

すぐ寝たか…。
最近ずっと忙しかったから相当仕事で疲れてたのか、体調が悪いのずっと我慢してたのか、ただ泣き疲れたのか…。
……全部かな。
君をよく観察してるつもりなんだけど、まだまだ君を理解しきれてないってことなのかな。
僕の力不足で君に辛い思いをさせちゃってごめんね。
もっと君をよく見て、辛い思いしてるサインを見逃さないようにするから。
だから、君からも僕をもっと求めてほしいな。
僕ももっと努力するから、君も僕にがんばって甘えてきてね。
待ってるから。