突然家にいた病み系彼氏

合鍵を渡してないのに、彼女の家に勝手に入っていた彼氏。
彼女の愛猫と一緒に彼女の帰りを待っている。

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おかえり
どうしたの?
驚いた顔しちゃって。
ねぇ、たま吉さん。

帰ってきたら、まず『ただいま』は?
ねぇ、たま吉さん。

何怒ってるの?
ん?鍵?
あぁ、僕持ってるよ。

どうしてって…。
そんなの作ったからに決まってるじゃん。
ねぇ、たま吉さん。

痛いなぁ、引っ張らないでよ。
あ~ぁ、たま吉さん、行っちゃった…。

何、怒ってるのさ…。

僕が勝手に鍵を作ったことに怒ってるの?
それは君が悪いんじゃん。

僕たち付き合ってもうすぐ一ヶ月くるんだよ?
それなのに君は全然この家の合鍵を渡してくれない。
僕は心配なんだ。
君が僕と離れている間、いつ、どこで、誰と、何しているのか、君に関する全てが気になってしまうんだ。
だから、合鍵を作ったの。
それだけだから。

(苛つきながら)
今度は何?
合鍵をいつ作ったかって?

ふふふ。
だって、君は寝てたんだもん。
知るはずないよね。

先週末、僕泊まったでしょ?
その時、君は前日の仕事の疲れからか、お昼寝するって言って夕方まで眠りこけてたでしょ。
あの時に君の鞄から家の鍵を少しだけ借りて、駅前で作ってもらったんだ。
君が昏々と眠りこけてくれたおかげで、ゆっくりお茶する時間もあったくらいなんだよ?
まぁ、そんなことしてないけどね。

家に戻ってきてからは、君の鞄に鍵を戻して、あとは君の寝顔を堪能してたよ。
君の寝起きの顔を初めて見た感動は今でも思い出すだけで興奮してきちゃう。
いつもの君はキリッとしてて、人に隙とか絶対見せないのに、寝起きの君はあんなにぽわぽわしてて隙だらけな人だとは思ってもみなかった。
だから、あの日は君の新たな一面を発見できた記念日でもあるんだよ。

真っ青な顔して、どうしたの?
そんな所に立ったままだと、足元から冷えちゃうから、早くこっちにおいでよ。
部屋温めておいたからさ。
ほらほら、ソファーに座って。

ここに来る前に買い物してたら君が好きだって言ってた紅茶を見つけて買ってきたんだ。
今から淹れるから少し待っててね。

(鼻歌)ふん♪ふん♪

お待たせぇ~。
入ったよ。
まだ、青い顔だけど、実は調子悪いとか?
熱は……なさそうだね。
今ならまだ病院も開いてるよ。
僕もついていくから一緒に行こう?

どこも悪くないの?
どこも悪くないのに、そんなに青い顔なわけないじゃん。
どこか悪いって。
正直に言ってごらん?
僕、怒らないから。
ね?言って?

ん?何?
聞き取れなかった。
もう一回言って?

『別れて』?
今、そう言った?

いきなり僕が君の家にいるからびっくりしちゃったんだよね。
だから、驚きすぎて、気が動転しちゃってるんだね。
とりあえず、落ち着くために、紅茶飲んで?
せっかく君のために淹れたんだ。
この紅茶、リラックス効果もあるんだって。
少し気を落ち着かせるためにも、一口でいいから飲んでみて?

どう?
美味しい?
よかった~。
きっと君なら喜んでくれるって信じてたよ。

【カップを倒す音】
おっと…。
火傷してない?
カップを倒すなんて君らしくないね。
カップは割れずに済んだけど…。

ん?
君、手がすごい震えているよ?
寒いんじゃない?
でも、頬が紅潮してる。
どうしたの?

何を入れたのって?
気付かれちゃったか…。
気付かれない自信あったんだけどなぁ。
無味無臭の即効性の痺れ薬だよ。
もうそろそろ喋ることすらできないはず。
ふふふ。
目が恐怖の色で染まったね。
その目が好きなんだ。

ねぇ、僕しか映さないでよ。
僕だけを好きでいてよ。
僕だけを愛していてよ。
君は僕と付き合っておきながら、他の男とも連絡を頻繁にやり取りしてるの、僕知ってるんだよ。

どうしてって、何でって顔してるね。
答えはこれ。
君のスマホにちょっとばかりいじらせてもらって、僕が遠隔で見られるようにしておいたんだ。
操作はできないから安心して?
勝手に返事したりとかはしてないから。
相手の男共を一人ずつ血祭にあげてやろうとは何度も思ったけどね。
君は僕以外に何人もの男と連絡を取るような悪い子だったなんて思ってもみなかったよ。
最近君が僕に冷たいなぁって思ってたのは、僕がいつもデートで割り勘なのが嫌だったんだね。
君が僕だけをずっと見てくれるようないい子なら全額僕が払ったってよかったんだ。
付き合い始める前からも、付き合い始めてからも、君の行動は全然変わらない。
だからどうすれば君の心を僕だけのものにできるかなって考えたら、こうするしかないよなって思ったんだ。

大丈夫だよ。
ちゃんとご飯も食べさせてあげるし、お風呂にも入れてあげる。
君を苦しめたいわけではないんだ。
僕だけを見てくれるようになってほしいだけ。
ただそれだけなんだよ。

僕だけを見てくれるって?
ふふふ、ありがとう。
物分かりいい子でよかったよ。

でも、君は口ばかりだからなぁ。
本当に、僕しか見ないのかな?
信じられないなぁ…。

そうだ!
これから、君の今の約束が本当だっていう証拠を見せて?
これからベッドルームに連れて行くから、そこでじっくり体に聞いてみることにするね?

(耳元で)
大丈夫、君を苦しませたり、傷つけたりしないって約束するから。
ただ気持ちいいことだけが待ってるから。
素直な君の気持ちを僕に教えて?
ね?