愛嬌の裏側に本音を隠している狸族男子

(パーティー会場内にて)

……こんばんは。
こんな隅っこでお一人ですか?

お連れの方とかは?

いない……んですか…。

僕も一人なんです。
これも何かのご縁ですし、ご一緒させていただいてもよろしいですか?

ありがとうございます。

あの……ここに来る前に、人間の女性が一人でいるのは危ないから複数人で行動するように、って言われませんでした?

(溜息)はぁ…。
あらかじめ忠告されていたにもかかわらず単独行動をした結果、最悪な事態になったとしても文句は言えませんよ?

ここには多くの亜人がいます。
肉食も草食も雑食も…。
貴女のような女性が一人でいるのは、カモがネギと鍋と調味料を背負っているようなもので、肉食や雑食の亜人にとっては最高のご馳走にしか見えません。
ぶっちゃけ、僕にはそう見えました。

あっ!自己紹介がまだでしたね。
僕は狸の亜人です。
ちなみに、狸は雑食。
なので、先程までの貴女はいいエサでした。
声をかけるのが遅くなったのは、周りの亜人たちが牽制し合ってたからで…。

待って!待って!
警戒しないで!
食べちゃおうとか、そういう狙いがあって声をかけたわけじゃないんです。

…まぁ……下心はありましたけど…。

貴女からすごくいい匂いがしたんです。
ご馳走的な意味じゃなくて、パートナーとしての意味で…。

亜人には運命の相手がいると言われているんです。
出会える確率は限りなく低いので、都市伝説になってますがね…。

でも、僕は今日出会ったんです。
貴女に…。

だから、誰かに取られる前に声をかけて守りたかった。

運命の相手かどうかなんて、本能で分かるんですよ。
亜人の半分は動物ですから。

人間にもあるでしょ?
ビビッとくる、みたいなこと。
それに近い感じです。

その顔……信じてないですね…?
もしかして、狸だから(だま)そうとしてるって思ってます?

いやいや。
(だま)したりしませんって。
ひどいなぁ…。

(だま)すくらいなら、多少迷惑になっても素直に正面から真っ直ぐ気持ちを伝えます。
嫌われたくないし、真っ直ぐ気持ちを伝えなかったせいで一緒になれるチャンスを逃すことになるとか、最悪以外の何ものでもないでしょ?

…僕の言ってること、間違ってますか…?

…でしょ?
僕は貴女と一緒になりたい。
死ぬまで、ずっと。
仮に一緒になって貴女が先に死んだとしても、貴女以外と一緒にはなりません。
その時は死ぬまで一人でいます。
だって、すでに僕の心は貴女でいっぱいで、ほかの人が入る隙間がないんです。

生涯貴女だけを愛し抜くと誓います。
なので、結婚を前提に僕とお付き合いしてくれませんか?

…へへ。
戸惑っちゃいますよね。
出会って数分で結婚を前提とした交際申し込みなんて…。

動物の本能だからか、本気で欲しいものは、全力で奪いにいっちゃうんです。
運命の相手なら、なおさら…。

貴女の気持ちも考えずに自分の気持ちを押し付けるようなことをしてしまって、すみません。

答えは焦らなくていいです。
ゆっくり時間をかけて考えてください。
考えてくれてる間に、貴女の心を僕でいっぱいにしちゃいますから。

その自信あるんで、覚悟しててくださいね?