【童話アレンジ】危機感がない赤ずきんにマーキングするツンデレ狼

(草むらをかき分けて赤ずきんがやって来る)

(溜息)はぁ…。
やっと来た。
今日は、3分20秒の遅刻。

謝れば許してもらえると思ってない?
ほんとに悪いと思ってるなら、毎回遅刻するのやめてよ。

別に怒ってなんかない。
君が遅刻した分の時間、一緒にいる時間が短くなっちゃうとか全然思ってないし。

…何、笑ってるの?
遅刻したくせに…。
ちゃんと反省してよね。

そんなことより、1つ聞きたいことがあるんだけど…。

あのさ……最近、このあたり来た?

…やっぱり、君だったんだ…。

少し前に「若い女の人間がこのあたりをうろついてる」って、噂を聞いちゃってさ…。
人間がこの近くに来るのは猟師くらいだし、ましてや若い女の人間なんか近づくはずがない。
若い女の人間で、このあたりに(土地勘とちかん)があるとしたら君くらいかなって…。

前々から言ってるけど、このあたりは俺の(縄張なわば)りだけど、たまに俺以外の狼だっているんだよ?

最近はずいぶん減ったけど、勝手に(縄張なわば)り荒らしてく(不埒者ふらちもの)がまだいるの。
そういうヤツに見つかってたら、襲われてたかもしれないってのに…。

どうして、このあたりをうろついてたの?

『俺に会いたくて』…?

そんな理由で?
危ないのに、このあたりうろついてたっての?

いつも言ってるじゃん。
森の中は誰がいるか分かんないから危ないって。
特に若い女の人間なんて、俺たち狼からしたら、極上のエサでしかないんだよ?

触ればすべすべしてる(肌理きめ)細やかな肌。
筋肉と脂肪のバランスがよくて、程よい柔らかさの肉質。
食べようとした時には恐怖で、痛さが気持ちよさに変わった時には歓喜で鳴く声。
どれもこれも同族にはない物ばかり…。
最高だよね。

あっ!待って!
今のは誤解!
俺は違うから!
君をエサとして見たことは1度もないよ。
ただ君と一緒にいたい……それだけ。

ってか、俺の話なんかどうでもいいの。
今は君の話の途中なの。
脱線させようとしないで。

(赤ずきん、反論しようとする)

と・に・か・く!
俺以外の狼にとって君たち若い女の人間は極上のエサってことなんだから、危ないことはしないで。
会える日以外、森に入るのは禁止。
分かった?

いつも『分かってる』って言うくせに、全然分かってない行動とるの、マジで意味分かんない。

なんで怒るの?
君が言ってることとやってることが違うのは事実じゃん。
怒る必要なくない?

…じゃぁ、分かったよ。
こっち来て。
いいから。

(赤ずきんを抱きしめる → キスマを付ける)

これでよし…。

『何したの?』って分かるでしょ?
マーキングだよ。
マーキング。
君が誰のものかって、もし襲われたとしても分かるようにね。

まぁ、(気休きやす)めでしかないけど。
マーキングされてても、気にせず襲うヤツは襲うし…。

(おす)なんて、人間だろうが、狼だろうが一緒。
己の欲望に忠実で、目の前に好みの(めす)がいれば、襲いたくなるもんなの。

俺?
…俺はちょっとズレてるから、そこまで欲望に忠実ではない……にしても、襲いたいか、襲いたくないかと言われたら襲いたいよ?
好きな子のイイ声を聞きたいと思うのは、(おす)の本能だし。
でも、そればっかだと不安になるでしょ?
『体目当てなのかな?』って…。

とはいえ、食べないとはひと言も言ってないからね?
俺、好きな物は最後まで取っとく派なだけ。
君のことは、最後の最後にちゃんと食べてあげる。

食べられるその時まで、ドキドキしながら待っててね。