ひょん
voice:ひょん
小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの
黒真鳴入/Kuroma Mei
voice:黒真鳴入/Kuroma Mei

【童話アレンジ】運命の人を手に入れるために手段を選ばない策略家な王子

(王子、部屋の扉をノックして中に入る)

突然の訪問、失礼いたします。
私はこの国の王子です。
ただいま、(国中くにじゅう)を回って女性にお願いをしておりまして…。

突然なんですが……その……このガラスの靴を履いてほしいんです。

(貴女あなた)もご存知かとは思いますが、先日私の(きさき)を探すための舞踏会を開催しました。
これは、その時の落とし物で、持ち主を探してるんです。

もし、(貴女あなた)がこの靴の持ち主なら、ぴったり合うはず。
どうか、今この場で履いてもらえませんか?

断る…?

それはできませんよ。
これは(勅令ちょくれい)です。
国民である(貴女あなた)に拒否権はありません。
まぁ、拒否することもできなくもないのですが……いくら(片田舎かたいなか)(村娘むらむすめ)と言えど、その時はどうなるか分かりますよね?

脅迫だなんて…人聞きの悪い…。
そんなつもりは(一切いっさい)ありません。
私はあくまで事実を()べているだけですから。

ふふ。
(物分ものわ)かりのいい人ですね。

さぁ。
履いてください。

(シンデレラがガラスの靴を履く → 王子、ぴったりなのを確認する)

……ようやく見つけた。
私の運命の人…。

舞踏会の日からずっと(貴女あなた)のことが忘れられませんでした。
私の(きさき)になってくれませんか?

『舞踏会に行っていない』というなら、どうしてこの靴が(貴女あなた)の足にぴったりなんでしょう?
この靴が(貴女あなた)の足に合わせて作られているからではないんですか?

人によって、足の幅や指の長さ、甲の高さ、その他諸々…違うんですよ。
特に、この靴に関しては、少しでもサイズが違えば履くことすらできません。

よって、導き出される答えはひとつ。
この靴の持ち主は(貴女あなた)で、あの日舞踏会で私と踊ったということ。

これでも、まだ否定しますか?

…やっと認めてくれましたね。

では、一緒に城に行きましょう。
父である国王に、報告しなくては…。

そして、それが終わったら、すぐ結婚式です。
1日も早く(貴女あなた)を私の(きさき)にしたい。
でないと、悪い虫がついてしまいそうで…。

(ボソッと)…ここが都会でなくてよかった…。

この場所を(けな)してるわけではないですよ?
貴女がとても魅力的だから、私はただ心配なんです…。
あの日、たった1曲しか踊っていない私の心を奪ってしまったんですから。

それに、見るからに貴女はここでは人としての生活をできていないですよね?
(隙間風すきまかぜ)だらけで今にも倒れてしまいそうな(はな)れに住まわされ、肌はボロボロ、髪はパサパサ、服は破れて()ぎはぎだらけ。
(母屋おもや)に住んでる(母娘おやこ)の生活と違いすぎます。
こんな場所にいつまでも私の(きさき)を置いておけません。

さぁ。
私の手を取って?
一緒に城に行きましょう。

どうして私の手を取ってくださらないのです?
何か気になることがありますか?

……なるほど。
なら、約束をしましょう。

私は側室を迎えません。
私の妻は(貴女あなた)だけ。
(貴女あなた)1人を生涯愛し続けます。

男に(二言にごん)はありません。
もし、約束を(たが)えたら、煮るなり焼くなり、(貴女あなた)の好きにしていただいていいですよ。
それほどに(貴女あなた)を愛していますから。

…これでも、まだ私との結婚は考えたいですか?

(「少し時間を欲しい」と言うシンデレラ)

分かりました。
では、とりあえず落ち着くために、城に行きましょう。
それから、ゆっくり私のことを知って、結婚について考えてください。

ね?
シンデレラ。

ん?
あぁ、名前ですか。

まぁ、これでも王子ですし、国民の個人情報なんか見ようと思えばいくらでも見られます。
とはいえ、女性のみの情報を知るといっても、その量は(膨大ぼうだい)…。
なので、最初から(貴女あなた)のことを知っていたかどうかは…。

(耳元で)秘密です。