予約と言いつつ、ちゃっかりマーキングしちゃう兎族男子

(パーティー会場にて)

お姉さん、どうしたの?
さっきからキョロキョロして…。

ありゃぁ…。
一緒に来てた人とはぐれちゃったのか…。
それはつらいね…。
これだけ人がいるから、簡単には見つかんないかも…。

もしよかったら、俺と一緒にいない?
一緒に来てた人が見つかるまでの間。

この場に人間の女性が一人でいるのは危ないよ?
亜人の中には狼とかライオンとか、肉食なヤツもいるし…。
その点、俺は無害。
草食のうさぎの亜人だから。

(おねだり上手な感じで)……どう、かな…?

…やったー!

あっ……ごめんなさい。
敬語使わなきゃいけないのに、めっちゃタメ口…。

ほんとに?
敬語使わなくていい?

よかったぁ…。
どうにも敬語って苦手で…。

お姉さんもタメ口でいいからね。
たぶん俺の方が年下だと思うし。

ねぇ。
お姉さんって、スイーツ好き?

じゃぁ、あっちに行こ。
スイーツいっぱいあるから。

(会場内を二人で歩き出す)

聞いた話だと、このパーティーのために有名店のスイーツ用意したんだって。
たかがパーティーのためだけにそんなことしちゃうとか、すごいよね…。

(お姉さんの腕を引く)

あっぶな…。

俺が隣にいたからよかったものの、ちゃんと周り見なきゃ。
俺みたいに人間に友好的な亜人ばっかじゃないんだよ?
人間を(見下みくだ)してて、今みたいにわざとぶつかってこようとするバカもいるから注意してね。

……って、話聞いてる?

(溜息)はぁ…。
俺のことほったらかして目の前のスイーツに夢中になるなんて、ひどいなぁ…。

なんてね。
嘘。嘘。

お姉さん、ほんとにスイーツ好きなんだね。
子供みたいに目がキラキラしてる。

どれが食べたい?
取ってあげる。

いいって。
遠慮しないで。

これとこれと…。
ここからここまでね。

ほかには?

もういいの?

じゃぁ、そこの席で食べよ。

(それぞれ席に着く)

はい。
どうぞ。

ほんとおいしそうに食べるね。

俺はいいよ。
なんか食欲なくて…。

うぅん。
体調が悪いとかじゃなくて、この雰囲気が苦手ってだけ…。
うさぎの習性なのか、環境が変わると食欲落ちちゃうんだよね…。

…やっぱ、それ、ひと口ちょうだい。

お姉さんが食べてるとこ見てると、どれだけおいしいのか食べてみたくなっちゃった。

あーん。

(もぐもぐする)

おいしいーっ!
さすが有名店。

ありがと。
あとは、お姉さんが食べて。

……あのさ、変な質問してもいい?
答えたくなかったら、答えなくていいから。

お姉さんって、付き合ってる人いる?

ふぅーん。
だったら、俺が立候補してもいい?
どうしてもお姉さんが欲しくなっちゃった。

亜人には運命の相手がいるって知ってる?
出会う確率はかなり低いらしいんだけど、出会ったら本能で分かるんだって。

普通に考えて、都市伝説だと思うよね。
さっきまでの俺もそうだった。

でも、お姉さんと出会って、分かった。
初対面の人には人見知りして警戒心むき出しになるのに、最初からそんなことなかった。
匂いとか雰囲気とか、全部ひっくるめてお姉さんの隣が心地いい。
ずっとこのままでいたいって、本能が叫んでる。

…俺と付き合お?

(困るお姉さん)

あー……ごめん。
初対面の相手にいきなり告られて返事できるわけないよね。

返事はまた今度でいいよ。
その代わり…。

(お姉さんを抱きしめる → スリスリする)

誰かに取られないようにマーキングだけはさせて。
お姉さんの隣は俺が予約してるって周りに知らしめないと…。

大丈夫。
お風呂に入れば取れちゃうよ。

でも、もし付き合うことになったら、お風呂に入っても取れないくらい、中も外もいっぱいマーキングしてあげるね。