(チリーンみたいな鈴の音)
(神様、ゲームしてる(コントローラをガチャガチャしてる音))※以下、ゲームしたまま
ん?
何?
ここ?
死後の世界。
アンタ、さっき死んだんだよ。
魂だけになったから、ここに来れたってわけ。
以上、説明終わり。
……ごめん。
今いいとこだから、邪魔しないでくれる?
(少し間を開ける)※ ゲームしたまま
(ひと息つく)ふぅ…。
終わった。終わった。
セーブ……っと…。
(コントローラのガチャガチャ音、終わり)
で、何が聞きたいの?
(笑いながら)穴が開きそうなくらい熱い視線送ってたら、「何か聞きたいことでもあるんだろうなぁ」って気づくって。
(笑いおさまって)今は気分がいいから特別に何でも答えてあげる。
俺のこと?
俺はこの世界の神様。
一番偉い人。
アンタ程度の人間が気安く話せるような相手じゃないの。
とはいえ、せっかくここまで来たんだし、ゆっくりしていけば?
お茶出すし…。
…『いらない』?
なら、出さない。
……じゃぁ、話の続き、いい?
さっきも言ったけど、ここは死後の世界。
死んで魂だけになった元人間が来れる場所で、俺の気分次第で生まれ変われるかどうかが決まる。
『気分悪くしたら』?
魂ごと消滅させてアンタという存在を消し去る。
…くらいのことはやっちゃうかも。
今まで一度もやったことないけど…。
何?
生まれ変わりたくないの?
へぇー。
珍しい人間もいるもんだね。
だいたいのヤツらは、口を開けば『人間に生まれ変わりたい』だの『元の世界に戻せ』だの、ワガママ放題言い出すからさ…。
アンタみたいな人間は初めて。
……気に入った。
アンタ、すぐ生まれ変わらせてあげる。
不安な顔しない。
元の世界に戻りたくないから生まれ変わりたくないって言ったんでしょ?
魂見ればアンタのあーんなことやこーんなことまで全部お見通し。
この世界のルールで、元の世界に生まれ変わらせることはできないから安心しなよ。
ほかにも、いろいろめんどくさいルールで縛られてるから、アンタの望み通りってわけにはいかないかもだけど、それなりに望みは叶えてあげる。
(ドヤァな感じで)なんてったって、神様だからね!
アンタの望みは何?
……『異世界で生まれ変われるなら何でもいい』?
できなくはないけど、ほんとにいいの?
周りにいる誰かに助けを求めても、助けてくれないかもしれないよ?
全部自分でやらなきゃいけないから大変なのは覚悟してる?
だったら、もう一度人間に生まれ変わりなよ。
元の世界でできなかったアレコレをやり尽くしておいで。
心残りだったんでしょ?
ついでに、俺から二つ加護あげる。
一つ目は、幸運の加護。
これさえあれば、次の人生、イージーモードで進めるはず。
二つ目は、アンタの希望を聞いてあげる。
無限に魔法が使える能力とか、疲れ知らずの体力とか……とにかく、何でもいいよ。
ふぅーん。
そんなのでいいんだ…。
謙虚というか、なんというか…。
(加護をつける)
はい。
これでOK。
(アラームが鳴る)
時間か…。
俺に言い残したことはない?
聞き残したことは?
(溜息)はぁ…。
あっそ。
あと、ないとは思うけど、もし俺に会いたくなったら、教会に行って祈りなよ。
……気が向いたら会いに行ってあげなくもないから…。
うるさいっ!
デレてないしっ!
さっさと生まれ変わっちゃえっ!
……次の人生、幸せで溢れますように。