ふたたび るびぃ
voice:ふたたび るびぃ
ぴぱれのボイスルーム
voice:ぴぱれのボイスルーム
風花ソウマ
voice:風花ソウマ

溜まりに溜まったストレスは彼女の匂いを吸って発散させる猫かぶり彼氏

大変申し訳ございませんでした。
以後、このようなことがないよう気を付けますので…。
はい…はい……失礼致します。

【受話器を置く音】

(溜息)はぁ…。

ん?
どうしましたか?

『すみませんでした』ってどうしたんですか?
君が頭を下げることはないでしょ?
今回のことは、全て私が悪いんです。
最終確認で見逃したんですから。

この程度のことで怒ったりなんてしませんよ。
人間なんですから、ミスの1つや2つあります。
だから、君は何も悪くありませんし、そこまで気に()む必要はないんですよ。

『でも…』って…。
どうしても気になるんですか?

それなら、少し話をしましょうか。
今の時間なら、たしか会議室が空いていたはずですから。

さぁ、行きましょう。

(会議室へ移動する)

【会議室のドアが閉まる音】

表の(ふだ)を『使用中』にして、鍵をかけて…。
これで、よしっ!

こっち来い。
いいから。

なにビビってんだよ。
『怒ってもらいたい』って顔してるくせに。

ちゃんと(ばつ)受けたいんだろ?
なら、俺の言うこと聞いて、さっさとこっち来い。

大丈夫だって。
この部屋には誰も入ってこないから。

(彼女が近づいてくる)

ん。いい子。

(つむ)って。
そのまま動くなよ?

(彼女を抱きしめる)

あぁ…(いや)される…。

なにビックリしてんだよ。
マジで俺がお前に怒るとでも思ったわけ?
あり得ねーんだけど。

(彼女の匂いを吸う) ※ 数回深呼吸してください。

相変わらずいい匂いだし…。
最高…。

なにって、見れば分かるだろ。
お前を抱きしめて、匂い嗅いでんの。
これが俺がお前に()(ばつ)

…あのさ、俺、会社にいて怒ったことないだろ?
これにはちゃんとした理由があるんだ。

自分が悪くても悪くなくても、怒られると、イヤな気持ちになって、気分が沈むだろ?
そうすると、仕事の効率もみるみる落ちていく。
でも、(些細ささい)な事でも褒められたら、もっと褒めてほしいって思うじゃん。
結果的に仕事の効率がどんどん上がっていく。

その場の雰囲気って、伝染するんだよ。
誰かが怒られてたら周りも(萎縮いしゅく)して仕事しにくい雰囲気になる。
でも褒められてたら、自分も褒めてほしいって思って(士気しき)が上がる。
仕事するなら、少しでもいい雰囲気の中で仕事してもらいたいって、俺はそう思ってる。
だから、俺は怒らない。

分かったら黙って俺に匂い嗅がれてろ。

(1回深呼吸)

イライラした気持ちがどんどん鎮まってく…。

最近お互い忙しくて、職場以外で会うこともなくて…。
どれだけ俺のストレスが溜まってるか知らないだろ。

今朝なんて、とうとう夢にまで出てきたからな。
お前が足りなさすぎて、相当重症なんだよ。

少しでも()れたら(はな)してやれなくなるから、今は距離を置こうとしたのに、お前からどんどん近づいてきやがって…。
俺の苦労が水の泡だよ。
ったく…。

なに、嬉しそうにニヤニヤしてんだよ。
ムカツクな…。

なぁ…残ってる仕事、あとどれくらい?
……それなら、今からがんばれば今日中に終われるな…?

『無理』?
自分で自分の能力にブレーキかけるような言葉、言うな。

お前はできるよ。
なんたって、俺の自慢の部下なんだからな。

俺の方も少し残業するけど、今日中になんとかする。

だから、今夜は俺の家来いよ。
明日からの週末、久しぶりに一緒に過ごそ。

今日、合鍵持ってる?
じゃぁ、家で待ってて。
なんなら、シャワー浴びて待っててくれてもいいけど?

痛っ!
叩くことないだろ。
どうせ一緒に風呂入ることになるんだから…。

ん?
『無理しないで』か…。
それは約束できない。
お前と1秒でも長く一緒にいたいから、多少は無理くらいしないとな。

大丈夫だって。
俺の実力、見とけよ。
お前より先に仕事終わらせてやるから。

……もし、俺がお前より先に仕事終わったら、ご褒美欲しいなぁー?

いいの!?
マジで!?
めちゃくちゃやる気出てきた。
じゃぁ、仕事戻るか。

あっ、分かってると思うけど、今日中に終わらなかったら、お仕置きだからな?
がんばれよ。