(濃厚なキス)
(通知音)
(彼女:「何か来たよ?」)
(キスしながら)ん?
何か来たね。
(彼女:「確認しないの?」)
うん。
確認しないよ。
今はその時じゃないもん。
それより、今はこっちが大事。
(濃厚なキス)
(着信音)※鳴らしたまま
(彼女:「電話、鳴ってる…」)
(キスしながら)うん。
今度は電話だね。
(彼女:「出た方がよくない?」)
今出る必要なくない?
大事なことなら留守電に入れるだろうし。
そうなったら、あとで折り返せばいいだけのこと。
(彼女:「急ぎの用事かもよ?」)
急ぎの用事かもだけど、今の俺には関係ない。
(彼女:「切れないし、やっぱり出た方がいいよ」)
ヤダ。
出ない。
ほら。
俺に集中して。
(濃厚なキス)
(スマホに向かって)あ゛ぁ゛ーもぅ!うるさいなぁ!
(舌打ち)チッ
(電話に出る)
(イライラして)もしもし?
何?
今取り込み中だったんだけど。
(適当な感じの相槌数回打つ)
分かった。分かった。
あとで対応しとく。
うん。
じゃ。
(電話を切る)
(彼女:「お仕事?」)
うん。
後輩から仕事の話だった。
『トラブって困ってるから助けて』って。
それだけのつまんない話のためだけに電話なんかしてこないでほしいよね。
せっかくの空気が
さっ。
気を取り直して、さっきの続きしよ?
(彼女:「……後輩さん、助けてあげて?」)
はぁ!?
なんでアイツを助けてやんなきゃなんないの?
(彼女:「だって、後輩さん困ってるんでしょ?」)
確かに後輩は困ってる。
でも、誰かに頼ってばっかじゃ、成長できないじゃん?
こういうトラブった時は特にね。
とはいえ、解決できないと会社の評判が落ちるだけじゃなくて、俺への評価も落ちるから、3時間
(彼女:「後輩さん、きっと心細いと思うよ?」)
心細くても、1人でやらなきゃいけないことに変わりないの。
早いか遅いかの違いなだけ。
いつかは
(彼女:「だとしても、手伝ってあげて?お願い」)
やけに、後輩の肩持つじゃん。
そんなに俺と甘い時間過ごすのイヤだった?
(彼女:「そういうわけじゃ…」)
そういうわけじゃないなら、どういうわけ?
場合によっては、許さないけど…。
……なーんてね。
嘘。
分かってるから。
誰にも邪魔されずに甘い時間過ごしたいんだよね?
(彼女:黙って頷く)
俺も同じ気持ち。
だからこそ、全部後回しにしようとしたんだけど…。
(溜息)はぁ…。
1時間だけ仕事してくる。
絶対1時間で戻るから、その間にいろいろ心の準備しといてね?
(彼女:「心の準備って?」)
心の準備は心の準備だよ。
(耳元で)1時間後、楽しみに待ってて。