小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの
いずみのお兄さん
voice:いずみのお兄さん

かわいくするのは俺の役目

じゃぁ、今から前髪切ってくね。

どれくらいの長さにしたいとか希望ある?

 (彼女:「んー、特にないんだよね…」)

そっか…。
ないかぁ…。

なんとなくでも、『こんな感じにしたいなぁ』みたいなの、ない?
『短めで』とか、『長さは変えずに軽く』とか(大雑把おおざっぱ)なのでもいいし、『今の長さから1cmだけ短く』とか細かいのでもいいし…。

 (彼女:「そう言われても困る…。君に任せるよ」)

任せるって言われてもなぁ…。

 (彼女:「お客さんから『お任せで』みたいなこと言われないの?」)

お客さんからのお任せ?

…あるにはあるけど、『かわいい感じで』みたいなイメージを言ってくれるもん。
『全部お任せ!』みたいな君とは違うの。

 (彼女:「怒った?」)

怒ってはないけど、困ってる。

 (彼女:「なんで?」)

だって、自分の彼女をかわいくできるんだよ?
最高にかわいくするために、いろいろやりたいじゃん。

 (彼女:「たとえば?」)

たとえば?
んー……今の長さのままでいくなら今後伸びることも考えて、整えて軽さを出しつつ、アレンジしてみるとか?
仕事の時はこんな感じにピンで止めて、デキる女っぽく見せられるし、普段ならワックスとかで流したら邪魔にならないし…。

逆に思い切って、(眉上まゆうえ)まで切るのもアリだと思うんだよね。

 (彼女:「眉上は無理」)

えぇー!?
無理なの?

絶対かわいいと思うのに…。

 (彼女:「贔屓目で見てるからだよ」)

うぅん。
(贔屓目ひいきめ)に見なくても、絶対似合う。
君のことが誰にも負けないくらい大好きな彼氏である俺が言ってるのに、信じられない?

 (彼女:「……信じられなくない」)

ん。
信じてくれてありがと。

とはいえ、君がしたい前髪にしたいのが俺の本音。
ざっくりでもいいから、君の希望聞かせてくれない?

 (彼女:前髪のリクエストを彼に言う)

(相槌数回打つ)

分かった。
じゃぁ、ちょっとだけ目瞑っててね。
終わったら、また声かけるから。

(彼女の前髪を切る)※ 少し間を開ける

いいよ。
目、開けて?

こんな感じだけど、どう?

 (彼女:「すごくいい…!」)

気に入ってくれたみたいでよかった。
アレンジの仕方だけど…。

 (彼女:「やって!」)

えっ……『やって』って…?

 (彼女:「君が毎日やって」)

俺が毎日やるの!?
マジで!?

 (彼女:「…迷惑?」)

迷惑なんかじゃないよ。
好きなだけ彼女の髪を触れるとか嬉しいに決まってんじゃん。

店で指名率トップのプライドにかけて、誰にも負けないくらい毎日かわいくしてあげる。

 (彼女:「お願いします」)

その代わり、俺からもしてもらいたいことがあるんだけどいい?

 (彼女:「何?」)

君からチューして?
ご褒美のチュー。

どこでもいいから。

……ダメ?

 (彼女:「どこでもいいのね?」)

うん。
どこでもいい。

できれば口がいいけど、君の好きなとこでいいよ。

 (彼女:「…分かった」)

やった!

あっ!
あと1つお願い。
これは割とガチなやつ。

今後髪切りたいとかアレンジしたいとかあったら、俺に声かけて。
どんなに忙しくても時間作って、俺がかわいくするから。

…だから、誰にも髪をいじらせないで?

 (彼女:「うん。分かった」)

絶対だよ?
約束だからね?

これからの未来、君をかわいくするのは、俺の役目……ね?