副反応で発熱した彼女に寄り添う彼氏

おはよ。

俺のこと、分かる?

……よかったぁ…。

ここ?
ここは病院。

あっ!
起き上がろうとしないで。

腕に針入ってるから。
今は栄養の点滴してるところ。

終わるまで時間かかるし、ゆっくり寝てて。

『点滴なんて…』じゃないよ。
最近あんまりご飯食べてなかったでしょ。
体調悪い時は、いつも以上に栄養()らないといけないからね。

……今朝、倒れたの覚えてない?

(うつ)ろな目で起きてきたから、声掛けようとした瞬間、糸が切れたみたいに倒れたんだよ。
君の体に触ったら、すごく熱くなってて、何度呼びかけても反応がないから、(いそ)いで救急車呼んで、今に(いた)るって感じ。

今は気分、どう?
昨日から少し悪そうだったけど…。

ムカムカする感じがあるくらい?
吐きそうとかではないの?

そっか…。

他には?
何か体調がいつもと違うところってある?

『大丈夫』って言うけど、ほんとに?
俺を安心させようと、無理して言ってるんじゃない?

…信じていいんだね?

分かった。
信じる…。

それで、君が寝てる間に担当してくれた先生と話してきた。
君が倒れた原因だけど、注射の副反応だって。

最近変わったことなかったか、先生に聞かれて、『昨日注射したくらいです』って答えたら、『その注射が原因でしょう』って言われた。

予防接種とかでは、よくあることみたい。
副反応って言って、気持ち悪くなったり、熱が出たりするらしいよ。
予防接種した日から翌日くらいにかけて、体調不良を起こすって教えてもらった。

でも、今まで予防接種しても、ここまで体調悪くなるようなことなんてなかったじゃん。
『なんで今回だけ?』って思って、ここ1週間のことを振り返ってみたんだ。

君さ…ずっと忙しかったよね。
ご飯も少ししか食べないし、睡眠時間削って仕事してたみたいだし…。
それが原因かなって。

どうせ、毎日遅くまで起きてたんでしょ?

ダメじゃん。
ちゃんと寝なきゃ。
『睡眠不足はお肌の敵』って自分でよく言ってたのに。

『でも…』じゃない。

とにかく、先生から2、3日は安静って言われたから、君がやってたこと全部休み。
仕事も、家事も、何もかも…。
いいね?

俺も休むから、君の身の回りの世話は任せて。

会社には救急車呼んだ後に、すぐ連絡入れたから大丈夫だよ。

彼女が苦しんでるの知ってて、いつも通り仕事なんてできるわけないでしょ。
ちょうど有給取れって言われてたから、まとめて休み取っちゃった。
なんと、1週間っ!
だから、君が元気になるまで、そばにいるよ。

……それから、君に1つ謝らないといけないことがあるんだ。

君のスマホ、勝手に見てごめんなさいっ!

無断欠勤はよくないと思ったから、君の会社の連絡しようとしたんだ。
でも、番号知らなくて…。
悪いとは思ったんだけど、勝手に見ちゃった。

連絡先以外は何も見てないから。
絶対に見てない。
ほんとに。

…許してくれる?

ありがと。
緊急事態とはいえ、ほんとにごめんね。

あと、連絡した時に、上司の人から伝言預かった。
『仕事は大丈夫なので、今週はゆっくり休んで元気になってください』だって。
優しい上司の人でよかったね。

お互い今週は休みになったし、ゆっくりする時間できたから、ずっと一緒にいられるね。

久しぶりじゃない?
こんなに長い時間一緒にいられるの。

ここ最近は休みの日でも部屋に(こも)って仕事してたし…。
たまにはゆっくり2人で過ごしなさい、って神のお()げかもね。

なーに?
嬉しそうな顔しちゃって…。

俺、怒ってるんだよ。

君が倒れた時は、ほんとに怖かった。
『もう目を覚まさないかも…』とか、悪い(ほう)にばかり考えちゃって…。
目の前真っ暗だったんだから。

(耳元で)悪いと思ってるなら……ごめんねのチューして。

大丈夫だよ。
何かあったらナースコール押してくださいって看護師さんに言われてるから。
何もしなければ誰も来ないよ。

ほら、早く。

(触れるだけのキス)

…仕方ない。
今はこれだけで許してあげる。
元気になったら、もっといっぱいしてね。

ふふ。
大きなあくびしちゃって…。
まだ少し眠いかな。
目がトロンってしてる。

もう少し寝てていいよ。

どこにも行かないよ。
言ったでしょ。
元気になるまで、そばにいるって。

だから、安心して。

…おやすみ。