ふたたび るびぃ
voice:ふたたび るびぃ

マネージャー彼女にゾッコンなアイドル彼氏は彼女に幸せでいてもらいたい

(ライブスタッフに対して)お疲れ様でしたー

今日のライブ、どうでしたか?

ほんとですかっ!嬉しいですっ!

またよろしくお願いしますっ!

(溜息)ふぅ…。

あっつ…。

ねぇ。水。

なんで言われなきゃできないの?

何年、僕のマネージャーやってんの?

僕が今何が欲しいとか分からないわけ?

(溜息)はぁ…。

あり得ないんだけど…。

タオル。

()きたいから、さっさと渡してよ。

ったく…。

ほんと(無能むのう)なんだから…。

(ライブスタッフに対して)あっ、お疲れ様でした。

打ち上げですか?

行きますっ!

準備できたら、打ち上げ会場に行けばいいんですよね?

はーいっ!すぐ準備して向かいますね。

【楽屋の扉の開閉音】

…ごめんねっ!

さっきはあんな冷たい態度取って…。

だって、アイドルとマネージャーが付き合ってるなんて(うわさ)が立ったらヤバイじゃん。

(うわさ)だけならまだしも、週刊誌に書かれたりしたら、もっとヤバイじゃん。

そうなったら、君は僕のマネージャーから(はず)される。

君と離れて仕事するなんてヤダ!絶対無理!

君には一番近くで見守っててほしいもん。

でも僕、君が近くにいると、どうしても甘えたくなっちゃうから、こうするしかなくて…。

あんなこと言っちゃうと君への評価が下がるって分かってる。

分かってるんだけど、周りの目も怖くて…。

君を傷つけてばかりで…。

ほんとに、ごめんなさい。

気にしてないの?

どうして?

僕、君に対してかなりキツイ言い方してるでしょ?

もし、僕が君の立場だったら()えられないもん。

…ほんとの僕を知ってるから?

ほんとの僕って?

どの僕がほんとなの?

…今?

今って、君と二人きりの時の僕ってこと?

へぇー。

そうなんだ。

最近自分でもよく分かんなくなってきちゃったんだ…。

1日のほとんどをアイドルとして演じてるから、ほんとの自分を見失ってて…。

自分で自分のことが分かんなくなるとか、ヤバイよね。

…もうアイドル辞めようかな。

そしたら、君と外で堂々と手(つな)いでデートできるし。

いつもお(うち)デートばっかりで我慢させてるよね。

君はそれでも楽しそうにしてるけど、僕はすごく不安なんだよ。

『ほんとは、外でデートしたいんじゃないかな?』って…。

今だけでいいから、正直に言って?

君の気持ち、聞かせてよ。

(相槌数回打つ)

…やっぱり外でデートしたいよね。

知ってたよ。

ロケとかで、カップルが手(つな)いでるの(うらや)ましそうに見てたの知ってるから。

『あぁいうの、したいんだろうなぁ』って思ってた。

ごめんね。

君を好きになっちゃって…。

ごめんね。

()しに弱い君を強引に彼女にしちゃって…。

でも、もう終わりにしよっか。

………別れよう。

君を僕から解放するよ。

次の彼氏は僕みたいなアイドルじゃない、一般の人と付き合うんだよ?

そして、外でデートいっぱいして、幸せになって。

僕の分まで…。

【頬を平手打ちされる音】

…痛っ!

ちょっとっ!

いきなりほっぺ(なぐ)るとかある?

これでも僕、アイドルなんだけど。

顔は商売道具だよ?

それでも、アイドルのマネージャー?

…って、泣いてるの?

なんで?

君は解放されたんだよ?

もうアイドルである僕の彼女じゃなくなったんだよ。

自由なんだよ。

外でいっぱいデートできるんだよ。

なんで泣くの…?

『勝手なこと言わないで』って…。

だって、君だって言ったじゃん。

『外でデートしたい』って。

ん?……僕と外でデートしたいの?

でも、僕と付き合ったままだと、これから先も外でデートはできないよ?

さっきは『辞めようかな』って言ったけど、やっぱりアイドルの仕事好きだもん。

今日みたいにライブやって、皆が応援してくれてるって(じか)で感じると、やっぱり嬉しいもん。

アイドルは辞めない。

辞めたくない。

それでもいいの?

君には(つら)い思い、苦しい思い、いっぱいさせちゃうと思うけど、それでも僕とまだ一緒にいてくれるの?

(涙声で)…ありがと。

泣いてないしっ!

汗が目に入っただけ。

うるさいしっ!

黙ってっ!

もうっ!!!

(濃厚なリップ音)

うるさい(くち)は僕の(くち)(ふさ)いじゃうんだからね。

分かった?

ふふ。

顔、真っ赤だよ。

さて、シャワー浴びてこようかな。

あんまりのんびりして遅れて行くわけにもいかないでしょ。

僕がシャワー浴びてる間にその真っ赤なかわいい顔、元に戻しておいてね。

僕のかわいい彼女さん。