しっかり話を聞きながらも次の約束をしてくるハイエナ系男子

こんばんは。
お姉さん、一人?

だったら、一緒に飲まない?

えぇー!?
即行拒否んないでよ…。

ナンパ…?
…のつもりはないけど、そうかもね。

あっちでお姉さんの様子伺ってた。
ツレがいたら気まずいじゃん?
でも、ツレいなさそうだから、一緒に楽しく飲みたいなぁって思って、誘いに来たんだ。

ってか、お姉さん大丈夫?

飲み過ぎじゃない?
ペースも量も半端ないって…。
そんな飲み方してたら、酔い潰れちゃうよ?

ほら。
今手にしてるグラス、離して。
ね?

(彼女がグラスから手を離す)

で、何があったの?

だって、何かなきゃこんな無茶な飲み方したりしないでしょ?
どう見たって、お姉さんの飲み方はやけ酒だもん…。

俺でよかったら、話聞くよ?

こういうのって、赤の他人の方が話しやすかったりするじゃん?
これっきりの関係なんだし…。
お姉さんの胸の中でもやついてるいろんなこと、全部俺に吐き出しちゃいなよ。
聞くからさ…。

(相槌数回)

うーわ……何、その環境…。
お姉さん、よくやってられんね。

俺は無理…。
我慢できないもん。

どんなにがんばっても認めてもらえないどころか、もっとやれ!って…。
普通に考えてあり得ない。

お姉さんはよくがんばってるよ。
すっごくがんばってる。

うぅん。
言い過ぎなんかじゃないよ。
ほんとにがんばってる。

お姉さんのがんばってる姿見たことないヤツが何言ってんだって感じだけど、話聞いてる限り、お姉さんががんばってないなんて思えない。
人の10倍はがんばってる。

あっ……ちょっ……泣かないで?
ごめん。
泣かすつもりはなくて…。

誰よりもがんばってるのに認めてもらえないのってつらいよね…。
経験あるから、お姉さんの気持ち痛いほどよく分かる。

俺って、この見た目に、この(しゃべ)りじゃん?
自分でやったとしても『うまく(口車くちぐるま)に乗せて、誰かにやらせたんだろ!』っていっつも怒られるんだよね…。
もう慣れちゃったんだけどさ…。

お姉さんは俺みたいに慣れちゃダメだよ?
俺はあくまで悪い見本なんだから。
いい?

お姉さんのがんばりをお姉さんの周りの人が誰一人として認めなくても、俺は認めるよ。

ほら。
もう泣かないで?

あんまり泣いてばっかだとチューしてあげよっか?
びっくりして涙止まるかもよ?

うわぁ……その鮮やかなまでの泣き止み具合、ショックすぎて俺が泣きそう…。
めちゃくちゃ傷ついたわぁ…。

ふふ。
お姉さん、やっと笑ったね。
泣き顔もそそるものがあったけど、笑った顔の方がずっとかわいい。

またつらくなったら、いつでもおいで。
毎週この時間には、いるから。

ダメ。ダメ。
一人でつらいこと抱え込んじゃ…。
マジで体壊しかねないって…。
定期的に胸の内にしまい込んでるドロドロした黒い感情を吐き出さないと、苦しむのはお姉さん自身なんだよ?
そんなのイヤでしょ?

だったら、これからは絶対無理はしないこと。
約束できる?

ん。
じゃぁ、約束の乾杯。

(グラスを合わせる)

今度は今日みたいになる前においでね?