天蘭-soran-
voice:天蘭-soran-

待つと言いつつもどんどん攻めてくる親戚の年下男子

(ショッピングモールにて)

ねぇ、次どこ行こっか?
姉ちゃん行きたいとこある?

えぇー!?
なんでもう帰るの?
まだまだこれからじゃん。

ヤダ!
帰んない!

ねぇ!
母さん、おばさん、聞いて?
姉ちゃんがもう帰りたいとか言ってる。
俺、まだ買い物したいし、遊びたい!

(拗ねて)…じゃぁ、分かった。
今から多数決を取って、多かった方に従う。
それでいい?

母さんとおばさんも多数決に協力して。

もう帰りたい人ぉー。

(姉ちゃん、母、おばさんが手を挙げる)

えぇー!?
母さんもおばさんも帰りたいの!?

(母とおばさんに悪魔の囁きっぽく)…ねぇ、知ってる?
ここ、二人が行きたいって言ってたお店入ってるよ?

ほら。
前にテレビか雑誌の特集で見てたお店だよ。

そう!それ!
そのお店。
たしか、ひとつ上のフロアだったはず。

よかったね。
帰る前に気付いて。

でも、もう帰るなら行けないか…。

……帰るのやめる?
ほんとに?

はい!多数決でまだ帰らないことに決定!

(母に対して)ん?いいよ。
この辺で姉ちゃんとブラブラしてるから、母さんとおばさんはお目当てのお店行っておいでよ。

うん。
適当に時間潰したら、そっちに行く。

姉ちゃんに迷惑なんかかけないってば。
いつまでも子供扱いしないで。

はいはい。
分かってる。
さっさと行きなよ。

(母と叔母、退場)

ねぇ、姉ちゃん。
あそこのカフェで休憩しない?

喉、渇いちゃった。

『一人で…』とか寂しいこと言わないでよ。
奢るから、付き合って?

ね?
お願い。

やったー!
行こ!行こ!

(カフェに入る)

何にする?

ん。
了解。

オーダーして受け取ってくから、先に席座ってて。

(少し間を空ける)

(姉ちゃんと合流)

お待たせ。
こっちが姉ちゃんの。
あと、ケーキも。

姉ちゃんの好きなケーキあったから、一緒に買ってきた。

俺からのささやかなお詫びです。
お納めください。

だって、俺のワガママで帰れなくなったんだもん。
ごめんね。

歩き回って疲れたんでしょ?
姉ちゃんの荷物、持とうか?

いいって。
遠慮しなくて。
俺、全然疲れてないから。
あと半日は遊べるよ。

うん。
マジで。

若いって……何言ってんの…。
姉ちゃんだって、まだまだ若いじゃん。

そういえば、姉ちゃんっていつまでこっちにいるの?
姉ちゃんとほかにも行きたいとこあるんだよね。

えぇー!?
そんなすぐ行っちゃうの?

…せめてあと1日、2日くらい帰るの遅らせらんない?

『無理』って、なんで?

…そんなの、理由のうちに入んない。

(姉ちゃんの手を握る)

もうちょっとこっちにいてよ…。

……何?
別に手握ってるくらいよくない?

誰も俺たちのことなんか見てないって。
皆、自分のことに夢中だから。

まぁ、仮に見られてたとしても、カップルにしか見えないよ。
俺たち似てないし、そういう雰囲気意識して作ってるし。

そ。
そういう雰囲気。

分かってるくせに。
今日一日ずっと微妙な距離開けて俺のこと避けてたっしょ?

気付いてたからね?

……俺さ、こーんなちっちゃい頃から「大人になったら姉ちゃんと結婚するー!」ってよく言ってたじゃん。

姉ちゃんとか大人たちは『子供がよく言うヤツ』くらいの認識だったかもしれないけど、あれ、本気だったんだよ?
もちろん、今もね。

俺、姉ちゃんのことが好き。
子供の頃からずっと。

この目が冗談言ってるように見える?

別に今答えようとしなくていいよ。
ゆっくり考えて。

いきなり俺のことを男として見ろって言っても無理なの分かってるから。
あと少し待つくらい平気。

こう見えて、気は長い方なんだよ?
とはいえ、どんどん攻めてくけどね。

(スマホの通知音)

あっ、母さんからだ。
買い物終わったから合流しよう、だって。

行こ?

(店を出て、母たちの元へ向かう)

ねぇ。
もうすぐ帰っちゃうなら、今日、うち泊まってってよ。

なんでダメなの?
理由は?

…そっか。
残念…。

(母たちの元に到着)

(母に対して)ごめん。
遅くなった。
姉ちゃんとカフェでのんびりしてた。

で、お目当ての物は買えたの?

ふぅーん。
よかったじゃん。

帰ったら見せて。
俺もどんなのか見たいし。

(おばさんに対して)ねぇ、おばさん。
今日、泊まってかない?
買い物で疲れたでしょ?

自分では大して疲れてないって思ってても、意外と疲れてるもんだよ?
今から帰って、途中で事故するのとかイヤじゃん。
だから、今夜はうちに泊まってって、体力回復させてから、明日の朝帰ればいいよ。
ね?
そうしよ?

ね?ね?
お願いっ!!

えへへ。
やったー!

ここまで来たんだし、ついでにご飯も食べて帰ろうよ。

俺はねぇ、がっつり食べれるなら何でもいい。
超腹ペコだから。

姉ちゃんは何がいい?
何か食べたいものある?

姉ちゃんも何でもいいって。
母さんたちで決めて。

あっちにフロアガイドあったから、見てくれば?

うん。
ここで待ってる。

(母たちと離れる)

ってことで、姉ちゃんも一緒にお泊まり決定ね。
「姉ちゃんを落とすなら、おばさんを落とせ」って言葉があるの知らない?

まぁいいけど…。
寝るとこ、俺の部屋になると思うから、今のうちに覚悟しといて。

子供じゃないんだし、何の覚悟かくらい分かるでしょ?

(小声で)今夜、楽しみだね。