(着信音)
もしもーし。
俺。
ごめん。
いきなり電話なんかして…。
声聞きたくなっちゃってさ…。
今、電話大丈夫?
仕事だったりしない?
そっか。
家なんだ。
何してたの?
『晩ご飯の準備』?
ふぅーん。
今日の晩ご飯、何?
えぇー!?
いいなぁ。
俺も食べたい。
だって、君の手料理、俺好みの味付けで好きなんだもん。
1番好きなもの?
それってひとつしか選んじゃダメな感じ?
じゃぁ、無理。
どれもこれも好きすぎて、ひとつに選べないから。
……ねぇ。
また作ってくれない?
タイミングが合えばでいいからさ。
やったー!
何作ってもらおっかな?
ん゛ん゛ー……あっ!ハンバーグ!
中にチーズ入ってるヤツ!
あれ、食べたい!
ほんとに?
いいの?
約束だよ?
めっちゃ楽しみにしてるね。
ん?俺?
さっきまで残業してて、今帰ってる途中。
違うんだよ。
残業したくてしたわけじゃなくてね…。
これには深ぁーいわけがあるんだけど、聞いてくれる?
あのね、昼頃に俺が真面目に仕事してたら、周りが『雪降ってる!』って話してたの。
雪って聞いたら、普通に気になっちゃうじゃん?
で、外見たらほんとに雪降ってて、テンション爆上がりしちゃって…。
やんなきゃいけないこと山ほどあるのに年甲斐もなく窓に張り付いて、「雪!降ってる!」って子供みたいにはしゃいじゃったせいで、時間食って残業するハメに…。
…何、笑ってるの?
どうせ『子供っぽいなぁ』とか思ったんでしょ?
分かるよ。
それくらい。
えっ!?
そっちでも雪降ったの!?
今日寒かったもんね。
底冷えする感じで…。
ちゃんとあったかくしてる?
部屋の中だからって薄着だったりしてない?
ほんとかな?
へぇー。
去年気に入って買った、あのモコモコの部屋着着てるんだ。
それなら、OK!
あの部屋着、手触りいいから、俺も気に入ってる。
ずっと触ってたい。
いやいや。
俺が着るのは、違うんだって。
君が着て、「かわいいなぁ」って愛でて、いっぱい触りまくるのがいいの。
あの部屋着、なんか気持ちよくて、落ち着くんだよね。
ほら。
子供とかでよくあるじゃん。
お気に入りの毛布とかタオルとかが手元にないと寝られない的なヤツ。
あれに近いかも。
うるさいなぁ…。
さっきから『子供、子供』って…。
そればっか…。
ちゃんと大人だしっ!
そんなこと言って意地悪するなら、今度子供じゃできないようなことして、大人だって思い知らせてやる。
さぁ?
どんなことするかは、その時になんないと分かんないかな。
(彼女の部屋のインターホンが鳴る)
…誰か来た?
だったら、電話切るよ。
うぅん。
悪いとか思わなくていいって。
少しでも話せてよかった。
うん。
じゃぁ…またね。
(彼女の家の玄関扉が開く)
わっ!
…へへ。
びっくりした?
会いに来ちゃった。
ほら。
中、入って。
モコモコの部屋着着てても、外寒いし、風邪ひいちゃう。
(玄関扉が閉まる音)
(彼女を抱きしめる)
…会いたかった…。
いつぶりだっけ?
…そっか。
そんなに経ってたか…。
”忙しい”を理由に、長い間一人で寂しい思いさせてごめん。
ずーーーっと会いたかったに決まってんじゃん。
毎日「会いたい!会いたい!」って思ってたら、とうとう昨日の夜、夢に見ちゃったし…。
(彼女から体を離す)
今日みたいな雪が降ってる時に、デートしててね。
急に君から別れを告げられて、去っていく君を追いかけるんだけど追いつけなくて、「待って」って叫んでも待ってくれなくて、そのまま一人取り残される夢。
…うん。
分かってる。
あり得ないって。
でも、今日の身に沁みるような寒さが置いていかれた時の血の気が引いてく感覚に似てるわ、雪降るわで、やけに夢とリンクするから、ずっと会ってない不安みたいなのが急に込み上げてきて、居ても立っても居られなくて…。
(彼女が抱きしめてくれる)
ひとつ、お願いしてもいい?
バカな俺が、安心できるようにチューしてくれない?
『大丈夫だよ。離れないよ』って。
(触れるだけのキス)
もうちょっと…。
(濃厚なキス) ※ 長めにお願いします。
ん?
いいじゃん。
チューしながらお尻触っても。
電話でも言ったけど、このモコモコ部屋着を着た君は最高の触り心地なんだもん。
モコモコの、ふにふにの、すべすべで…。
身も心も癒されて、手が離れたくないって言ってる。
ご飯…?
そうだったね。
作ってたんだっけ。
いきなり来ちゃったし、俺のはコンビニで適当に買ってくる。
えっ!?
いいの!?
今から作るの大変じゃない?
じゃぁ……お言葉に甘えて、いただきます。
その代わりと言っちゃなんだけど、迷惑かけたお詫びとして、夜の大人の時間にいっぱい奉仕するね。
明日もあるし、今日は1回だけにする。
でも、たった1回だからこそ、今までのイチャイチャ不足を満たすくらい満足させてあげるから。
期待してて。
(触れるだけのキス)