(彼女が背中にくっついてくる)
ん?
どうした?
『何でもない』じゃねーだろ?
お前が黙って背中にくっついてくる時は何かしらある時なんだし。
(彼女、黙ったまま)
黙ったままだと、すっげー気になるんだけど。
俺、何か気に
違うなら、何なんだよ。
黙ったままじゃ分かんねーって。
エスパーじゃねーんだし…。
怒ったりしねーから、言ってみ?
…『愛してるゲームがしたい』?
それって、お互いに「愛してる」って言い合う、合コンとかでやる、あのゲーム…?
言わせておいてなんだけど、無理…。
そんな恥ずかしいの、言えるわけねーって。
いいか?
今から例え話するから、聞きながらよーく考えてみろ?
中学の頃の英語で、比較の3段活用みたいなの、あったじゃん。
原級、比較級、最上級?みたいなヤツ。
で、『好き』が原級だとする。
これを比較級にすると『大好き』。
さらに、最上級にすると『愛してる』。
俺の言ってる意味分かるか?
お前がさっき言った『愛してるゲーム』ってのは、最上級の好きを言い合うってこと。
それを俺に要求したんだぞ?
んなこと、言えるわけねーよ…。
「好き」すら言えねーってのに…。
どうしても無理。
絶対無理。
どんなにかわいくお願いしてきても無理なもんは無理っ!
(落ち込む彼女)
あ゛ぁ゛ー、もうっ!
落ち込むなよ。
俺が悪いみたいじゃん。
(彼女を抱きしめる)
マジでごめん。
俺にはほんと無理なんだって。
自分の気持ちとか、甘い言葉を口にするのなんか、ハードル高すぎ…。
今だから言うけど、お前に告るのだって、告るって決めてから実際に言うまで2週間もかかったんだからな?
そんなヤツが、いきなり「愛してる」なんて言えるわけねーよ…。
…でも、お前の悲しむ顔は見たくねーから……今回だけ特別。
1回しか言わねーから、ちゃんと聞けよ?
(覚悟を決める感じの深呼吸1回)
……愛してる。
お前のこと、本気で愛してる。
死ぬまでずっとそばにいてほしい。
……あ゛ぁ゛ーっ!
失敗した…。
緊張しすぎて、プロポーズになったし…。
マジ恥ずかしい…。
今言ったこと全部忘れろ。
今すぐ忘れろ。
おいっ!
顔上げんなっ!
こっち見んなっ!
うっせー!バーカ!
もう2度と甘い言葉なんか言ってやるもんかっ!
こんな言葉言わなくても分かるくらい、ずっと俺のそばにいて、俺だけを見てろ。
…そしたら、いつか気まぐれに甘い言葉言ってやるよ。