小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの
やぴさん。
voice:やぴさん。
あかいあかさ【シチュエーションボイス】
voice:あかいあかさ【シチュエーションボイス】

彼女との『初めて』は全部大事にしたい犬系彼氏

ごめんっ!
お待たせ!

焼きそばの屋台、結構人並んでて…。

でも、君を待たせた価値はあるよ。
実はね、コレ、できたてですっ!

触ってみたいの?

…いいけど、ほんとに熱いよ?

……ね?
アツアツでしょ?

あっちにベンチあったから、そこで食べよっか。
立って食べるのは、さすがに抵抗あるし…。

ん。
じゃぁ、手繋ご。
はぐれないために。

(2人で人ごみから少し離れた場所まで歩く)

座る前にちょっと待って。
ハンカチ()くから。

せっかく浴衣着てくれてるんだもん。
汚れたら悲しくなっちゃうでしょ?

その点、ハンカチなら汚れても悲しくならないし。
それに、君の浴衣を守るためならハンカチも汚れるのは(本望ほんもう)のはずだしね。

…どうしても気になるの?

んー……だったら…。

(先に自分がベンチに座る)

…ここ、空いてるよ?
俺の膝の上。

これなら、ハンカチが汚れる心配もないし、君の浴衣が汚れる心配もない。
2人の心配事が解消される唯一の方法だと思うけど…?

えぇー!?
そんなに全力で膝の上に座るの拒否らなくてもよくない?
俺、傷ついちゃう…。

…なーんて。
冗談。

はい。
ハンカチ()いたから、どうぞ。
座って。

(袋の中から中身を取り出しながら)先に食べていいよ。

いいの、いいの。
1人でいっぱい待たせたお()び。
好きなだけ食べちゃって。

ふふ。
おいしい?

目がキラキラしてて、君がおいしい物食べた時の顔してるんだもん。

あぁー。分かる!
お祭りマジックだよね。

特別変わった物が入ってるわけじゃないんだけど、お祭りの屋台の味って最高においしい、みたいな…。
お祭り独特の雰囲気がおいしくさせるのかもね。

ん?
もう、いいの?

ちょっとしか食べてなくない?

お腹いっぱい?
ほんとに?

…じゃぁ、残り全部食べちゃうね。

ほんとに食べちゃうからね?

あとで『ちょっとちょうだい』って言っても遅いよ?

ほんとのほんとにいいんだね?
…分かった。

(袋をガサゴソしながら)えっと……お箸…お箸…。

あれ?
ないなぁ…。

さっきお店の人に「お箸2(ぜん)入れて」ってお願いしてたはずなんだけど、この1(ぜん)しか入ってなかったみたいで…。

仕方ない…。
(行儀ぎょうぎ)悪いけど、(さか)(ばし)で食べるか…。

いやいや。
『別にいいじゃん』じゃないでしょ。
普通にお箸使ったら、間接キスすることになるんだよ?
分かってる?

……間接キスだろうと、普通のキスだろうと、最初のキスは大事にしたいじゃん。
ムードとか、いろいろさ…。

最初は1回しかないんだよ?
このチャンスを逃したら、2度とないんだよ?
そういうのって適当にしちゃいけない気がする。

ちょっと待って!
だからって、しないとは一言も言ってない!
というか、むしろしたい……です…。

でも、今すぐはしない。
絶対に。

俺たちの初めてのキスが、焼きそばのソース味なんてヤダ。
そこんとこは、こだわりたいの。

ソース味のキスってのも、ある意味思い出になるけど、なんか違くない?
できることなら、りんご飴味とか、かき氷のシロップ味とかにしたい…。

…どうせロマンチストだよ…。
君との”最初”は、全部大事にしたいんだもん。

俺のワガママって思ってくれていいから、あとで口直ししよ。
なんか甘い物で。

それから、初めてのキス…しよ?
ね?