小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの
かみしろ動画保管庫
voice:かみしろ動画保管庫

小説家彼氏の本音はどっち…?

……うわっ!?
びっくりした…。

いつからそこにいたの?

そっか…。
ごめん。
全然気付かなくて…。
ずっと考え事してた…。

そ。
考え事。
…というか、悩み事?
なんかうまくまとまんなくて…。

俺の小説ってリアルっぽさがウリじゃん?
読んでて頭ん中で明確に想像できる…みたいな…。

それができてないとこがあって…。
自分で納得できる形に(おさ)まんなくてさ…。

見せんの?
いいけど…。

……ここんとこ。

読んで、感想聞かせて。
担当編集としても、いち読者としても。

(少し間を開ける)

……どう?

あぁ……やっぱり…。

あのさ、1つお願い聞いてほしいんだけど…。
せっかく来てくれたんだし、ここのシーンと同じことやってみたいなぁ……なんて…。

いいじゃん。
実際やってみたら、何か(つか)めそうな気がすんだよ。

お願いっ!
協力してっ!
俺のため…というより、楽しみにしてくれてる読者のために。

…ありがと!!

じゃぁ、まずはキスで彼女が腰抜かすとこから…。

そこからやる決まってんじゃん。
気になるとこのちょっと前から始めないと話の流れが(つか)めないでしょ。

うるさい。
もう黙って。
さっき読んで、ここのシーンの彼女はそんなにお(しゃべ)りなキャラじゃないって分かってるはずだよ。

今は小説の中の彼女になりきって。

(濃厚なリップ音)

…どう?
腰抜けそ?

『苦しいだけ』か…。

あっ!
ちょっと待って!

(スマホをタップする音 → ふむふむみたいな相槌)

……よしっ!
お待たせ。

たぶん次はうまくいくはずだから、もう1回試させて。

(濃厚なリップ音) ※ 長めにお願いします。

…こっちの方がよくない?

強がって嘘()かなくていいよ。
気持ちよかったんでしょ?

顔が(とろ)けてるのが、何よりの証拠。

あっそ。
認めないなら、それでもいいけど…。

ん?
さっきの調べてたこと?

口の中の性感帯について。
昔聞いたことあったの思い出して、ちょっと調べたんだ。
デマだと思ったけど、ほんとだったんだなぁ…。

あっ……なんかいい感じの書けそう。
スッと話が()りてきた。
2時間……いや、1時間で仕上げる。

悪いけど、部屋から出てってくれない?
集中して書くから、1人になりたい。

……おーい。
人の話、聞いてた?
書きたいから出てけって言ったの。
さっさと部屋から出てって。
邪魔になるから。

……まさかとは思うけど、さっきのキスで腰抜けたとか?

嘘!?
マジ!?
キスひとつで腰抜かすとか、あり()るんだ…。

キスが久しぶりとかそんなの関係なくない?
俺とのキスが気持ちよかった。
それだけじゃん。

こっちおいで。
今の続きしてあげる。

書き直すのは……あとでやる。

すぐそこで彼女が動けなくなってるのに、ほったらかしにする彼氏がどこにいる?
いろいろ試す絶好のチャンスを見逃すほどバカじゃないよ。

大丈夫だって。
少しくらいサボったって、締め切りまでは時間あるし。

ここからの時間は俺のために協力してよ。
ね?