えあー
voice:えあー
どら置き場
voice:どら置き場

めんどくさがり屋なアザラシ系彼氏が作る料理

【着信音】

もしもし?
どうしたの?
なんか急用?

何もないなら、電話なんかしてこないでよ。
びっくりするじゃん。

…まぁ、いいけどさ…。

今?
昼ご飯食べて終わったとこ。

君は?
今お昼休み?

ふぅーん。
ご飯、食べた?

えぇー!?
いいなぁ。
俺もそれ、食べたかった…。

だって、この間テレビで特集されてたじゃん。
「おいしそうだね」って、2人で話したの忘れた?

忘れてないなら、なんで自分だけ食べるの?
…もう。

あっ!
ねぇ、ねぇ。
そのお店…。

よく分かったね。
テイクアウトしてるかどうか聞くって。

さすが俺の彼女。
理解が早くて助かるわ。

で、テイクアウトしてた?

そっか…。
してないんだ…。
残念…。

ヤダよ。
食べに行くなんて。

なんで家から出なきゃいけないの?
絶対家から出たくないもん。

ん?
俺の昼ご飯?

うん。
家にあった物で作ったよ。

ふふんっ!
すごいでしょ!
いいよ。
もっと褒めても。

作った物?
カップ麺だけど?

ちょっ……なんで急に(あき)れるの?
さっきまで褒めてくれてたじゃん。

カップ麺だって作ったうちに入るって。

いい?
よーく聞いてよ?

カップ麺の蓋開けて、かやく入れて、お湯を(そそ)ぐ。

3つも工程踏んでるんだから、料理なのっ!

普段めんどくさいが口癖で料理しない人間が、インスタントでも作ったんだから褒めてよ…。

カップ麺以外、何もなかったよ。
パンとか冷凍食品とか…。

うん。
冷蔵庫から冷凍庫、棚の中まで、ひっくり返して探したけど、何もなかった。

何もないなら食べなくても…って思ったんだけど、今日はなんだかすっごくお腹減っちゃってさ…。
どうしても何かお腹に入れたくて、「なんか食べられそうな物…」って探したら、カップ麺が1つだけあってね。
ほかにも探したんだけど、それしかなくて…。

だから、作って食べたの。
カップ麺を。

…分かってくれた?

コンビニ?
まぁ、そうだね。
行けばよかったんだろうけどさ…。
なんか行く気にならなくて…。

君だってあるでしょ?
どうしても今日は出かけたくないなぁ、って気分の時。

それが、俺にとっては今日だったってだけ。

出かけるのがめんどくさいってだけで、いつもじゃないもん。
どうしても出かけなきゃいけない時は、出かけるもん。

そうなのっ!
こんなくだらないことで嘘ついたりしないって。

(※ 以下、最後まで拗ねた感じで)

……もういいもん。

俺、怒ったから。
冷凍庫にあったアイス、たーべよっ!

君の?
違うでしょ。
だって、名前書いてなかったよ。
食べられたくなかったら、名前書くってルールだったじゃん。

書かれてなかったから、俺が今から食べてもいいんだもん。

うるさいなぁ…。
もう電話切るね。
今からアイスの時間だから。

じゃぁ、お仕事がんばってね。
バイバーイ。

(電話を切る)