インドア派な彼女は、おうちデートが好き

あれ?
まだ着替えなくていいの?
今日、出かけるって言ってなかったっけ?

キャンセルになったんだ…。

…じゃぁ、どこか出かける?
せっかくメイクしてるし…。

今からだと、遠出してデートはできないけど、近場でならできるよ。
君さえよければ、の話だけどね。

家でゆっくりしてるの?
そっか…。

別にイヤじゃないよ。
君が家にいたいなら、それで(かま)わない。

ただ……俺に気(つか)ってたりしない?
君がインドアなのは知ってる。
だけど、いつもおうちデートじゃん。
俺の仕事の事情とか気にして、いつも『家にいる』って言ってるのかなって思ってて…。

別に、気にしなくていいんだよ?
俺の仕事のことなんて。

違う…?
ほんとに?

なら、いいんだ。
変なこと言ってごめんね。

……『人が多いから外はイヤ』?
それが家にいる理由?

ふふ。
君らしい。

ごめん。
笑ったりなんかして…。
バカにしてるとかじゃないからね。
俺の人が多いところ苦手だし…。

……俺、君のこと、分かってるようで何も分かってなかったみたい。
ダメ彼氏だね…。

どちらかと言うと、俺もインドアな方だから、おうちデートでいいって言ってくれる君と一緒にいるの、気が楽なんだ。
今までの彼女たちは、休みの度に『どこか連れてけ!』って(せま)ってくる子ばっかだったからさ…。
ゆっくり休みたい時があっても、こっちの気持ちなんてお(かま)いなし。
小さなイライラが積もり積もって、最後は喧嘩して別れるの繰り返し。
君みたいな子は、初めて。

でも、君と付き合い始めて、一緒にいる日はほとんど家に引きこもって、時間を過ごしてるだけ。
今までどこにも連れてってあげてないから逆に不安になるんだよね。
『これでいいのかな』、『我慢させてるんじゃないかな』って…。

家で君と一緒に過ごす時間…?
好きだよ。

俺にとっては特別な時間だもん。
君を観察するためのね。

あれ?
気付いてなかったの?

買ってたマンガ読んでる時に表情がコロコロ変わったり、ゲームしてる時のすっごい真剣な顔だったり…。
そういうのって、外でデートしてる時じゃ見れない一面じゃん?
おうちデートならでは、って感じでさ。

……もう…。
君って、俺の不安吹き飛ばすのうまいよね。
天才的だわ。
ほんとに。

さっきまで、めちゃくちゃ不安だったんだよ。
『連れてってくれる気あったんだ』とか『疲れてそうだから気(つか)ってた』とか言われたらどうしよう、って考えてたのに…。
それを、『おうちデートが好きなら、それでいいじゃん』で片付けちゃうんだもん。
(拍子ひょうし)抜けしちゃった。

でも、ありがと。
君を好きになれてよかった。
君が彼女でよかった。
ほんとに、そう思う。

痛っ!

えっ!?
何?何?
今、俺、叩かれながら怒られるようなこと言った?

ちょっ…!
待ってって…!
落ち着いて。
ね?

(彼女を抱きしめる)

…捕まえた。
耳まで真っ赤…。
かわいい。

()めるな』って言われても、さっき君がくれた言葉が嬉しかったんだもん。
『ありがとう』とか『ごめんね』とかは、その時に言わないと意味がないの。
言葉の重みが、違ってきちゃうんだよ。

『あとで言えば…』って思ってて忘れることってない?
あるでしょ。
それって、言う方もだけど、言われる方も忘れちゃうんだよね。
時間が経ってから、『あの時ありがとう』って言われても、ピンとこなくて、適当に流しちゃうことになるんだよ。
それじゃ、本当の『ありがとう』の意味じゃないと思うんだ。

『ごめんね』も同じ。
人によって、(とら)え方って違うけど、ほんとに悪いと思ってるなら、すぐ言わないと謝罪の気持ちがないと取られかねないからね。

言わなくていいわけないでしょ。
気持ちを伝えることは大切なことなんだよ。
さっき、君が言ってくれた言葉、ほんとに嬉しかった。
俺を受け入れてくれてるんだって。

うん……今更気付いた…。
だって、ダメ彼氏だもん。

だから、いっぱい君のこと観察して、君の全部を知りたい。
君の全部を知って、もっと君を好きになりたい。
これから先も、ずっと俺のそばにいてよ。

ねぇ、顔上げて。
俺を見て。

恥ずかしがってる君の顔が見たい。

悪趣味で、いいもん。
恥ずかしがってる君なんて、そうそう見れるものでもないからね。
今しか見れないのに、見逃したらダメでしょ。

ねぇ、お願い。
こっち向いて?

……ケチ…。
見せてくれたっていいじゃん。

まぁ、いっか。
時間はたくさんあるし…。
またいつか恥ずかしがってる君の顔が見れる日が来るかもしれないからね。

『ヤダ』って言っても、もう離してあげないよ。

…大好き。