冬はつとめて

ん…おはよ…。
今、何時?

…マジで?
まだそんな時間?

(スマホで時間を確認する)

ほんとだ。
まだ寝れるじゃん。
一緒にもうちょっと寝ようよ。

ほら、こっちおいで。

(彼女を引き寄せる)

やっぱり…。
手足冷えてる。

目が覚めたのって、この寒さで手足が冷えたからでしょ?

分かるよ。
こんなに冷たくなってるんだもん。
俺が温めてあげる。

(彼女を抱きしめる)

それにしても今朝、めちゃくちゃ寒くない?
寒いの苦手だから、つらすぎ…。

暖房付けるね。

(暖房を入れる)

今付けとけば30分もしたら温まるでしょ。
それまでお布団の中でイチャイチャしよ?

部屋の中でこんなに寒いと、外はもっと寒いだろうね。
雪、降ってるかな…?

(彼女が布団から出て、窓際に近づく)

あっ!こら!
まだ部屋温まってないんだから。
薄着で(窓際まどぎわ)にいたら風邪引いちゃうよ?

えっ!?
ほんとに?
ほんとに、雪降ってるの?

(窓際に移動)

ほんとだ…真っ白だね。
すごく綺麗。

何でそんなに嬉しそうなの?
君だって、俺と一緒で寒いの苦手なはずなのに…。

あっ!分かった。
雪遊びしたいんでしょ?

分かりやすすぎ。
ニヤニヤしてるんだもん。

でも、その気持ちも分からなくもないかな。
夜のうちに雪が降ったら、次の日の朝は誰の足跡も付いてない、あたり一面真っ白じゃん。
写真みたいで綺麗じゃない?

あっ!
あと、霜が降りた時も綺麗だなぁって思う。
葉っぱとか枝に霜が降りてる様子が好き。
植物本来の色に降りた霜の白がふんわりと覆いかぶさってて、画になるし、見た目がモフモフしてて、すごくかわいいんだ。

でも、霜の降りた植物って枯れちゃうんだけどね。

ん?
…教えてほしいの?

簡単に説明すると、細胞が壊れちゃうから。
植物も人間もたくさんの細胞で成り立ってるのは知ってるよね?
その一つ一つの細胞の中に含まれてる水分が霜に当たると凍っちゃうの。
それで、細胞が壊れて、死んじゃう。
つまり、枯れちゃうことになるんだよ。

分かった?

ふふ。
分かったような、分からないような顔してる。
かわいい。

朝から難しい話はやめよっか。

お布団に戻ろう。
体、冷えてきてる。

(2人で布団に潜りこむ)

そういえば、この部屋は暖房あるけど、リビングって暖房あったっけ?
(暖炉だんろ)しかなかったような…。

(溜息)はぁ…。
…だよね。

冷えきってる部屋に行かなきゃいけないって思うだけで憂鬱…。

冬だから寒いのは当然だけど、ここの寒さって肌を刺すような寒さじゃん?
さすがに、我慢できないって!

まぁ…(暖炉だんろ)に火を入れれば、すぐ温かくなるけど…。
それでも、無理なものは無理なの!
寒すぎるよ…。

早く暖かくならないかなぁ。
すぐにでも春になってほしいくらい。

『それはダメ』って、なんで?

(笑いながら)『(暖炉だんろ)が使えなくなるから』とか、かわいいんだけど。

いや、バカにしてないから。
『かわいい理由だな』って、ほんとに思ったんだって。

そんなに(暖炉だんろ)、気に入ったんだ?

このあたりだと春先でも(暖炉だんろ)使うんじゃない?
こんなに寒いんだもん。

ね?そんな感じするよね。

いつになったら使わなくなるんだろう?
梅雨くらいかな?
こんなに寒いところで生活したことないから分かんないけど…。

でもさ、俺、小さい頃からずっと思ってたことがあるんだよね。
バーベキューとかキャンプファイヤーで(まき)とか(すみ)、使うじゃん?
アレ、燃え尽きた後って、ちょっと(むな)しい感じしない?
灰が残った感じが寂しいというか、物悲しいというか…。

(暖炉だんろ)自体は好きだけど、火が消えて灰が残った(暖炉だんろ)は嫌いで…。
…分かる?

そう思ったら、昼間でも火を()やせない今がちょうどいいのかな…?

ふふ。
なんか矛盾してきたね。

(伸びをしてる感じで)ん゛ん゛っ……はぁ…。
二度寝できる時間あるけど、起きちゃおっか。
目、覚めちゃった。

着替えてリビング行こ。
暖炉に火入れて、コーヒー()れてあげる。
で、朝ご飯食べたら、雪だるま作ろっか。

雪うさぎも作りたいの!?

仕方ないなぁ。
いいよ。
飽きるまで、いっぱい作ろうね。