【玄関扉の開閉音】
ただいまぁ～。
って、父さんも義母さんも今日から旅行だっけ…。
今頃は温泉に浸かって、夫婦水入らずでいちゃついてるんだろうなぁ…。
二人の様子が目に浮かぶ…。
…それにしても、ようやく週末だぁ…。
今週忙しかったからすごい疲れた…。
【リビングのドアを開ける音】
あれ？
いない？
今日はバイトないって言ってたはずだけど…。
学校からまだ帰ってないのかな？
連絡してみるか。
【スマホをタップする音】
『まだ家に帰ってないの？』っと。
【通知音】
あれ？
どこかな？
自分の部屋？
【ドアをノックする音】
俺だけど、部屋にいるの？
【倒れるような音】
ごめん、開けるよ！
【ドアを開ける音】
どうしたの？
大丈夫！？
体、熱い…。
ちょっとおでこ触るよ。
だいぶ熱あるな…。
いつから熱があるの？
『言いたくない』じゃないの！
大事なことだから、言いなさい。
朝から！？
体調悪い時くらい休まないと余計に悪くなるでしょ。
『保健室で休んでたから大丈夫だった』って、そういうことじゃないでしょ。
何で無理して学校行ったの？
『俺に心配かけないように』？
そんなこと気にしないでよ。
もう俺達、家族なんだよ？
家族が心配するのは当然のことなんだから。
体温測った？
だいぶ体熱いけど…。
まだなの！？
ったく…。
とりあえず、体温測って。
それから、服脱いでパジャマに着替えること。
汗かいて気持ち悪いでしょ？
その間にお粥作ってきてあげる。
他に欲しい物あったら言って。
買ってくるから。
特にないの？
遠慮してたら怒るよ？
（優しく）
…本当にないんだね？
それならいいけど、もし、思いついたらちゃんと言うこと！
約束だからね！
じゃぁ、お粥作ってくるから、大人しく体温測ってパジャマに着替えてお布団に入ってること。
いいね？
（間を開ける）
お待たせ。
ぉっ、ちゃんと俺の言うこと聞いてくれたんだ。
えらいね。
少し起き上がれる？
お粥、食べられそう？
食べられるだけでいいよ。
無理して全部食べようとしなくていいから。
どうした？
急に泣き出して…。
体調悪い時にこんなに優しくされたことないの？
義母さんに言ったりは……できないか…。
『自分はまだ子供で、義母さんがいないと生きることもできない。だから、自分のために仕事してくれてる義母さんの負担にならないようにしないといけない』って思ってたんでしょ？
体調悪くても隠す癖がその時ついたんだね。
だから今朝も俺の負担にならないようにって隠してたってわけか。
君、いい子すぎ。
まだ子供なんだからわがまま言ったっていいんだよ。
辛い時はちゃんと辛いって言わないと分からないから。
寂しい時はちゃんと寂しいって言わないと分からないから。
素直に気持ちを言っていいのは子供のうちだけなんだよ？
もっとわがまま言っていいんだから。
わがまま言うのが今の君の仕事。
俺達大人はそれを叶えてあげるのが仕事。
家族ってそういうもんなんだから。
遠慮とかしなくていいから。
ほら、言って？
今の君の気持ち。
全部吐き出していいんだよ。
（相槌を数回うつ）
辛かったね。
今日一日、よくがんばったね。
えらい。えらい。
でも、次からはちゃんと言うこと。
体調悪いのに無理する必要ないんだよ。
さっきも言ったけど、俺達は家族なんだから。
心配するのは当然なの。
だからね、今何してほしい？
俺に何してほしい？
言って？
『あーんしてほしい』？
いいよ。
熱いからフーフーしてあげる。
フーフー
ほら、あーん。
…どう？おいしい？
よかった。
次の一口いくよ。
フーフー
あーん。
何だか餌付けしてるみたいで、いいね。
ほら、口開けて。
フーフー
あーん。
もういいの？
また食べたくなったら言うんだよ。
温め直して持ってくるから。
じゃぁ、薬飲もうか。
家にあるの粉タイプの風邪薬しかなかったけど、いい？
…錠剤飲めないんだ。
覚えとく。
じゃぁ、これ飲んで。
よく飲めたね。
いい子♪いい子♪
体冷えるとよくないから、そろそろ布団に入って。
寝るまでちゃんと側にいてあげるから、安心して寝ていいよ。
それから、枕元に携帯置いとくから、起きた時何か欲しい物あったら連絡して。
すぐ持ってくるから。
自分で起きて取りに行こうとか考えたら絶対ダメだからね。
さぁ、いい子は、もう寝ようね。
ほら、目を瞑って。
ちゃんと寝ないと、治るものも治らないから。
（できたら、お布団トントンして）
ゆっくり休んで早く元気になぁ～れ。