仕事ばかりで疲弊した彼氏が彼女の心音を聞いて安眠する

(疲れ切った感じで)
ただいま…。

あれ、起きてたんだ。
もう日付変わるよ。
早く寝ないと明日も仕事でしょ?

え?今日金曜なの?

完全に曜日感覚狂ってる…。
毎日始発で行って、終電で帰ってくるような生活してるからかな。
睡眠不足が続いて、おかしくなってるのかも…。

明日が土曜なら、君は仕事休み?
…いいなぁ。

俺は明日も仕事。
やってもやっても終わらないんだよ。
終わることのない無限ループにハマった感じ。

(溜息)はぁ…。
もう仕事したくない。
もう辞めたい。
辛いよ…。

『辞めていいよ』って、俺達の生活はどうするの?

『貯金あるから崩せばいい』って…。
(溜息)はぁ…。

(彼女に当たるような感じで)
そういう問題じゃないでしょ。

(彼女を避けるように)
ごめん。
シャワー浴びてさっさと寝るよ。

【シャワーの音】

ふぅ…。
シャワーだからか、疲れ取れない…。
ゆっくりお風呂に浸かりたいなぁ…。

【スマホをタップする音】

アラームセットして…。
今からだと寝れて3時間か…。
(溜息)はぁ…。

【ベッドルームに向かう足音】
【ドアの開閉音】

まだ起きてたの?
もう日付変わったよ?

こんな時間まで起きてたら明日体辛くなるよ。
…いや、明日じゃなくて今日か。

【布団に潜る音】

おやすみ。

(間を開ける)

ん…ぅ~ん…。
ごめん。
なかなか寝付けなくて…。

そろそろ睡眠薬でも買ってこようかと、真剣に悩んでるんだ。
睡眠薬で無理矢理にでも寝ればいくらかマシだろうし…。
まぁ、君には分からないだろうけど…。

ん?何?
抱きしめてくれるの?

あったかい。
ほっとする温かさだね。

さっきはイライラをぶつけて、ごめんね。
なんだか、君に当たり散らすようなことした。

精神的に参ってるのかも…。
寝られないことがこんなに辛いことだなんて思わなかった。

うまく寝れてないのは、ここ2週間くらい。
ちょうど忙しくなり始めたくらいの時期から寝れてないんだ。

君とすれ違い始めたのもそれくらいだよね。
こうして話すの、久しぶりだね。
いっそのこと、寝られないなら、こうして君と話してるのもいいかもね。

いたっ!
頭叩かないでよ。
暴力反対~!

ふふ。笑ってごめん。
君との何気ないやり取りが嬉しくて、つい…。

でも、久々に笑った。
笑えたというべきかな。

毎日同じ作業の繰り返し。
鳴り止まない電話対応。
積み重なるストレス。

もうボロボロだったんだなぁ。
笑うことすら忘れてた。

君のおかげで少し気分が楽になった。
ありがとう。

ねぇ、ギューしよう?
もっと君に触れたい。

(抱きしめる)ギュー

あのさ、意識的にしてるのか分からないけど、俺の顔が君の胸に埋もれちゃってるんだけど…。
『そうしてるの』って…。

ごめん。
今はそんな気分じゃないんだけど…。

いたっ!
さっきから頭ばっかり叩かないでよ。

エッチしようってことじゃなくて?

俺は何もしなくていいの?
…分かった。

君の心臓の音が聞こえる。
トクン、トクンって。

人の心臓の音ってこんなに心地いいものなんだね。
知らなかった。

(少し間を開ける)

(以下、眠そうに)
あれ…?
なんだか眠くなってきた。

君の心臓の音を聞いて落ち着いたからかな。
頭がボォーとする。
瞼も重くなってきた感じがする。

あんなに眠れなかったはずなのに。
君の心臓の音を聞いただけでこんなに眠くなるなんて。

君はまるで魔法使いだね。
僕だけの魔法使いだ。

本当に…眠い…。
我慢…できない…。
…おや…す…み…。

(寝息)すぅ…すぅ…