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チャラ男彼氏の本気の恋

ごめんね。
待たせちゃって。

帰ろっか。

 (彼女:「うん」)

(2人並んで歩き始める)

今日もいろいろ忙しかったぁ。
1日中バタバタ走り回って、さすがに疲れちゃったよ。

ちょっと前まではこんなことなかったのになぁ…。
やっぱ、歳なのかな?
なーんて…。

……どうしたの?
さっきから難しい顔してるし、黙ったままだし…。

何かあった?

 (彼女:「聞きたいことがあるの」)

聞きたいこと?

いいよ。
俺に答えられることなら。

 (彼女:「…なんで、手を繋ぐ以上のことしてくれないの?」)

…手を繋ぐ以上のことをしない理由、か…。

別に深い理由はないよ。
単にタイミングが合わなかっただけ。
それだけだよ。

 (彼女:「ほんとに?」)

ほんと。ほんと。

さぁ、遅くなるから早く帰ろ。

 (彼女:「……ヤダ。帰らない」)

……えっ…どうしたの…?
今まで『帰らない』とか、ワガママ言ったことなかったのに…。

 (彼女:「はぐらかさないで。ちゃんとした理由、教えて」)

(重めの溜息)はぁ…。
隠そうとしてるの、なんで分かっちゃうかな?

どうしても話さなきゃダメ?
できることなら、話したくないんだけど…。

だって、すっごくダサい理由だから…。
聞いたら、『ないわぁ…』ってガッカリするよ?
『聞かなかったらよかった…』って後悔するよ?
それでもいいの?

分かった。
じゃぁ、話してあげる。

(深い深呼吸1回)

あのさ、俺の悪い噂って知ってる?

毎日連れてる女の子が違くて、ワンナイトは当たり前。
1度抱いたら2度目はない。
女の子は使い捨てだと思ってる、ってヤツ。

やっぱ、知ってるよね…。

その噂ね、ほんとだよ。
俺の周りにはいつも女の子がいて、喧嘩ばっかしてた。
今日は誰が俺の隣にいるのか、って。
それを目の前でやられると、さすがの俺も気分が()えちゃうじゃん?
だから、順番に1日限定の彼氏になってあげてたんだよ。
彼女たちもそれでいいって言ってたし。
全員と普通にキスもエッチもした。

でも、今は違う。
誰とも関係を持ってないよ。
君と付き合う時に全部清算したから。

なんなら、スマホ見る?

(彼女にスマホを見せる)

ね?
女の子の名前、1人も入ってないでしょ?

それで、ここからが本題。

なんで君に手を出さないかって言うと……本気で君のことが好きだから。

本気すぎて、手を繋ぐことすらドキドキするんだよ?

 (彼女:「嘘…」)

嘘じゃないよ。
ほんと。

手繋いでる時、俺の手、湿ってない?

 (彼女:「たしかに、湿ってた…」)

でしょ?
それが証拠。
たかが手繋ぐだけなのに、いつもすっごく緊張してる。

俺にとって、君が生まれて初めての本気の恋をした相手なんだ。
だから、今までみたいに手を出すことができなかった。
君のことを大事にしたくて…。

これが君に手を出さないほんとの理由。

…ね?
ガッカリしたでしょ?

 (彼女:「…じゃぁ、同じことしてよ」)

同じことって、俺が相手してきた子たちと同じことって意味?

 (彼女:「そう」)

俺の話聞いてた?

言ったじゃん。
「君のことを大事にしたい」って。

同じことなんかできない。

 (彼女:「お願い。今より1歩先に進みたい…」)

もう…ズルいよ…。
その顔でお願いされたら、断れないの知ってるくせに…。

ん゛ん゛ー……じゃぁ、キスだけなら、どう?
キスの先はまた今度にしよ?

 (彼女:「なんで?」)

だって、ムードとか(欠片かけら)もないじゃん。
勢いでヤっちゃうとか、そんなのヤダ。
一生の思い出になるかもしれないのに…。
君との最初はいろいろ計画してるから、もう少しだけ待ってて。

ね?
お願い。

 (彼女:「…分かった」)

ん。
ありがと。

とはいっても、こんな道のど真ん中でキスは…。

 (彼女:「今、人いないよ?」)

今は誰もいないけど、キスしてる間に誰か来るかもしれないじゃん。
君のかわいい顔は誰にも見せたくないんだけどな…。

 (彼女:「してくれるの?してくれないの?どっち?」)

分かったって。
するってば。

目、(つむ)ってくれる?

(触れるだけのリップ音)※ 音なしでもOK

ヤバ…。
キス1つなのに、めちゃくちゃ気持ちいい…。

君は、気持ちよかった……って聞かなくてもいっか。

『気持ちよかった』って顔に書いてるもん。

でも、今日はもうおしまい。
ほんとは、もっとしたいけどね。
とっておきは最後まで取っとく派だから。

続きはまた今度。
今日以上に(とろ)けさせるから、期待して待ってて。