チョコ選びでどうしてもひとつを選べない犬系彼女

ねぇ、ねぇ。
今忙しい?

 (彼氏:「うん。普通に忙しいよ」)

ちょっとだけ時間くれない?

 (彼氏:「無理」)

ほんとにちょっとだけ。
……5分……いや、3分でいいから。
聞きたいことがあって…。

 (彼氏:「あとで聞いてあげるから、静かにしてて」)

あとじゃダメ!
今すぐがいいの。
絶対時間取らせないって、約束するから。

 (彼氏:「はぁ…。3分だけだからね?」)

ありがと。

あのね、これを見てほしいんだけど…。

 (彼氏:「バレンタインのチョコ?」)

そ。
バレンタインのチョコ。
この中だとどれが1番好き?

 (彼氏:「どれでもいいよ」)

ヤダ!ヤダ!
『どれでもいい』とか、超適当なこと言わないで。
今忙しいのは分かるけど、ちゃんと答えてよ。

 (彼氏:「こういうの、サプライズでやりたいんじゃないの?」)

そりゃ、最初は「サプライズで…」って思ったよ?
でも、いざ選び始めたら、「あれも、これも…」って1つに決めらんなくて…。

だから、私の代わりに選んで?
この中から。

 (彼氏:「だから、どれでもいいって」)

もぅ!!
『どれでもいい』じゃ困るから、「選んで」って、さっきから言ってるの!

 (彼氏:「じゃぁ、君が迷いに迷って選べなかったチョコはどれ?」)

私が選べなかったチョコ?

 (彼氏:「うん。それ、教えてよ」)

えっとね……これでしょ。
あと、これとこれと……これも!

全部、君の好みにドストライクじゃん?
食べれなくはないだろうけど、さすがに全部食べたらカロリーオーバーで確実に太るだろうし…。

 (彼氏:「チョコじゃない物は?」)

チョコじゃない物を用意するのも考えたよ。
ただ、それだとバレンタインじゃなくてもよくない?

せっかくのバレンタインなんだもん。
どうしてもチョコを用意したいの。

だから、一生のお願い!
私を助けると思って、1つ選んで?

 (彼氏:「じゃぁ……全部、かな」)

『全部』…?
そんなこと言って後悔しない?

 (彼氏:「うん。もちろん」)

ほんとに用意しちゃうよ?

 (彼氏:「いいよ」)

ほんとのほんとに全部食べてくれるの?

 (彼氏:「当たり前じゃん」)

太っちゃうかもしれないのに?

 (彼氏:「幸せ太りだからいいよ」)

私のために無理しなくてない?
さすがに甘党な君でも、この量を1人で食べるのはキツいでしょ?

 (彼氏:「俺1人で食べるのはキツいけど、君と一緒に食べればよくない?」)

私も一緒に!?

 (彼氏:「うん。最初からそのつもりだったよ」)

食べていいの?

 (彼氏:「甘いの好きでしょ?」)

……もぅっ!

(彼に抱きつく)

(耳元で)…ありがと。大好き。

じゃぁ、バレンタイン期待して待ってて。
心を込めて、特別おいしいのを作るから。