(海辺に初日の出を見にきた2人)
さむぅ…。
風冷たいし強いし、超最悪…。
あーぁ…せっかく髪セットしたのにボサボサ…。
誰だよ。
初日の出見ようなんて言ったヤツ…。
(彼女「自分が言ったんじゃん」)
…はい。
すいません、自分で言いました。
あまりに寒くて、ちょっとイラついてました。
それにしても、ほんとヤバいくらい寒くない?
天気予報で『かなり冷え込みます』って言ってたけど、こんなに寒いとは思ってもなかった。
手とか
大丈夫?
体震えてるけど…。
あのね、我慢強いことはいいことだと思う。
けど、それは時と場合によるの。
今は我慢しちゃダメ。
手、氷みたいに冷え切ってるし、こんな状態じゃ指先の感覚とか全然ないでしょ?
初日の出見れないのは残念だけど、もう家帰ろ?
ここで無理して風邪でもひいたら、元も子もないよ?
ほんとに大丈夫なの?
…ん゛ー……分かった…。
でも『もうダメ』って思ったら、すぐ言ってね?
いい?
約束だよ?
じゃぁ、こっちおいで。
俺の腕の中。
後ろからギューして温めてあげる。
少しでも風邪ひかないようにするため。
ごめん、ごめん。
今のは冗談。
だから、おいで?
なんで来てくれないの?
誰も俺たちのことなんか気にしてないよ。
初日の出に夢中になってるか、自分たちの世界に夢中になってるかのどっちかだから。
ね?
ほら、おいで?
(彼女をバックハグする)
あと、手出して。
いいものあげる。
はい、カイロ。
念のためと思って持ってきて正解だった。
女の子は体冷やしちゃダメなんだから、遠慮せずに持ってて。
俺はカイロなくても大丈夫だし。
君を抱きしめてるだけで、十分あったかいもん。
(スマホで検索する)
えっと……日の出時刻は…あとちょっとか。
(彼女にスマホを見せる)
ほら、見てみて。
これが日の出時刻。
で、こっちが今の時刻。
初日の出まであとちょっとだけ、がんばろうね。
(少し間を開ける)
(ボソッと)……綺麗だなぁ…。
なんかさ、太陽が昇る直前って神秘的じゃない?
水平線から少しずつ空が明るくなって、空の色がグラデーションになってて…。
まるでひとつの絵みたい。
何、笑ってるの?
俺だって、たまには感動することもあるよ?
もう笑いすぎ…。
どうせ
…失礼だなぁ、全く…。
(初日の出が出てくる)
あっ!
初日の出!
(手を合わせて、お願い事をする)
初日の出見たら、なんか拝みたくなんない?
ちょっとでもあやかりたいじゃん?
「今年もいいことがありますように」って。
どうせ
人間どこまでも
遠慮してたら、欲しい物なんていつまで
というわけで、今年も1年、
(耳元で)…帰ったらギューの続き、いっぱいしようね。