（息切れしながら）ごめん。
待たせた？

どうしたの？
『急に話したいことがある』なんて深刻そうな連絡してきて…。

……なんかあった？

『別れよ』って、どういうこと？
理由は何？
ちゃんと話して。

…ふざけないで。
『なんとなく』って理由で別れると思った？
それなら、『好きな人ができた』とか言われた方がまだ納得できた。

『なんとなく』で別れるなんて絶対しないから。
俺は許さないよ。

『ヤダ』じゃないでしょ。
なんでそんなに別れたいの？

…俺のこと、嫌いになった？
それならそうと、はっきり言ってよ。
ちゃんと受け止めるから…。

違うなら、どうして？
『なんとなく』なんて理由、(到底とうてい)受け入れられないよ…。
俺はこんなに君のことが好きなのに…。

嘘じゃないよ。
嘘だったら、こんなに必死になったりしないでしょ？

……誰かに何か言われた？

図星か…。
何言われたの？
怒らないから言ってみて。

（相槌数回打つ）

『君といるとつまんない』ね…。
それは、その友達の(言い)い(分ぶん)でしょ？

俺は君と一緒にいて、すっごく楽しいよ。
ほんとだって。
じゃなきゃ、長く付き合うことなんてしないでしょ。

君は俺より、その友達の言葉を信じるの？

…ありがと、俺を信じてくれて。
じゃぁ、さっきの『別れよ』って言葉も(撤回てっかい)でいい？

よかったぁ…。

そもそも、なんでそんな話になったの？
きっかけがあったんじゃない？

『表情がないことをからかわれた』？

んー、まぁ、確かに君はあんまり顔に感情を出さないよね。

俺も最初は分かんなかったもん。
でも、君と付き合い始めて少しずつ分かったよ。
君の目を見てれば、今どんな気持ちかってことにね。

嬉しいと優しくなって、悲しいとうるうるして、楽しいと輝いて…。
怒ってると全然目合わせてくれないんだよ。

君の感情を知る方法は誰も知らなくていい。
俺だけ知ってればいいんだから。
…そうでしょ？

ふふ。
かわいい。
照れてる。

ねぇ、俺の目見て。
これからする質問に答えて。

…俺のこと、好き？

ん。俺も大好きだよ。

それなら、もう『別れよ』なんて絶対言わないでね。
言われた瞬間、全身の血が引いたもん。
冗談じゃないよ。
ほんとに。

目の前が真っ暗になるって、こういうことなんだって実感した。
君が俺の前からいなくなるなんて考えたこともなかったから…。
すっごく怖かった…。
もうこんな思いしたくない。
それだけ、俺は君に(溺おぼ)れてて、君なしじゃいられないってこと、ちゃんと分かってね？

……笑ってる…。
初めて君の笑顔見れた。
すっごくかわいい。

もう1回笑ってみせて？

えぇー！？
いいじゃん。
減るもんじゃないのに…。
ケチぃー！

ふふ。
まぁ、いっか。
これからもずっと一緒にいるんだから、またいつか見れるよね。

かわいい笑顔見せてくれてありがと。

（触れるだけのリップ音）

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