ふたたび るびぃ
voice:ふたたび るびぃ

後輩からの差し入れが自分だけと知って告白してしまった先輩

あれ?お疲れー。
久しぶりじゃん。

部の方は、どう?
皆、元気してる?

そっか。
ちょっと安心した。

いやぁ……。
引退してから、お前らのこと気になってたからさ。

部活中の声とかは聞こえてくるんだけど、(近況きんきょう)とか聞けないじゃん。
学年違うと校舎違うから、なかなか会えないし…。
少しくらい時間見つけて顔出したいと思ってたんだけど、なかなかタイミングなくて…。

そう。受験勉強。
一応俺も受験生じゃん?
引退してから、予備校通いだしたんだよ。
それがめちゃくちゃハードでさ…。
ちょっと(滅入めい)ってたんだよ。

でも、久しぶりにお前に会えて、話できて、よかった。
なんか、お前ってホッとできる雰囲気あるよな。
柔らかい雰囲気というか、包容力というか…。
うまく言えないんだけどさ…。

ん?時間?
今日は予備校休みだから、時間あるけど。

渡したい物?俺に?
何?何?
お前から何か貰うのなんて、引退の時以来かも。

…これって、お菓子?
調理実習で作ったんだ。

すげぇー!
こんな手の込んだの、作ったの?

『簡単ですよ?』って…。
いやいや、俺には無理。
まともに卵も割れないような奴だぞ?俺。

マジですげぇよ。
()ってもいい?

(モグモグ)

うまっ!!

(モグモグ)

ごちそうさまでした。
ありがとな。
マジでうまかった。

…あのさ、これって、俺以外の奴にもあげたの?
たとえば、部の奴らとか…。

俺だけ…?
ほんとに?
めちゃくちゃ嬉しい!

…だけど、どうして俺だけ?
部の奴らにもあげたらいいじゃん。
いつも『腹減ったー!』って言ってるから、こんなうまい物貰えたら、きっと喜ぶと思うし。

なぁ…黙ってても、何も分かんないんだけど。
教えてくんない?
どうして俺だけにくれたのか。

………だんまり?
もしかして、俺には言えないようなこと?

…でも、俺、分かっちゃった。

お前が俺だけにくれた理由。
お前の顔、すげぇ真っ赤なんだもん。
俺の勘違いじゃなければ、それが答えってことでいい?

ふふ。
お前、めちゃくちゃかわいいな…。
ごめん。(おさえ)えらんねぇ…。

(後輩を抱きしめる)ギュー

あのさ、俺からも(ひと)つ言わせてもらっていい?

マネージャーってお前以外にもいるじゃん。
でも、俺、ずっとお前に頼み事してたじゃん。
『飲み物用意しといて』とか『備品補充しといて』とか。

俺が頼んだこと、お前は誰よりも早く完璧にこなしてくれた。
そこんとこ、すげぇ信頼してた。
お前に頼めば、間違いないって。

お前のこと、マネージャーとして入部してきてから、ずっと気に入ってたんだよ。
気に入ってる奴って、(かま)いたくなるじゃん。
最初はそんな感じだった。

それがいつからか、お前を目で追ってた。
『お前を俺のものにしたい』
気付いたら、そう思ってた。

…俺、お前が好き。

これから受験で忙しくなるから、恋人らしいこと何もしてやれない。
きっと(さみ)しい思いもいっぱいさせると思う。
それでも、俺と付き合ってほしい。
俺にはお前が必要なんだ。

(うなづ)くだけの返事はダメ。
俺の目を見て、ちゃんと言って?

(触れるだけのリップ音)

いきなりキスしてごめんな。
好きって言ってもらえて、嬉しくて…。
イヤじゃなかった?

そっか…よかった…。

(後輩を抱きしめる)ギュー

あぁ…帰りたくねぇなぁ…。
もう少し一緒にいたいなぁ…。

あっ!
お前、帰るとこだった?
じゃぁさ、途中まで一緒に帰ろ。

せっかくだから、いろんな話したい。
お前のこと、もっと知りたいから。

……というのは(建前たてまえ)で、本音はもう少しお前と一緒にいたいからさ…。

(つな)いで、一緒に帰ろ?