(電話にて)
(呼び出し音)
もしもし?俺。
今、時間いい?
いきなりなんだけど、今週末予定空いたりしない?
マジ!?
夕方以降も空いてる?
あのさ……花火大会あるの知ってる?
そ。
それ。
一緒に行かない?
(ちょっとムッとして)なんでまた『行かない』?
人ごみが苦手だってことは、この間会った時に教えてくれたから知ってる。
でも、花火自体は嫌いじゃないんだろ?
だったら、とっておきの場所用意する。
そこでなら人ごみの心配とかなく、花火見れるし……な?
とっておきの場所は、とっておきの場所。
『ヒント』…?
ヒントは……誰もが知ってる場所でありながら知られてない場所、とだけ教えてあげる。
これ以上は秘密。
正解は、当日になってのお楽しみ。
ただ、会場からかなり距離あるせいで、花火自体はちっちゃくなるけど…いい?
ん。
決まり。
ちなみに、門限とかあったりする?
夜に出歩くことになるから…。
『あんまり遅くなったらヤバい』かぁ…。
たぶん大丈夫だと思う。
どんなに遅くても、9時には家に帰れるはずだから。
ん?
お前のほかには、誰も誘ってないよ。
誰か誘ったら、あっという間に拡散されて、確実に大人数になるに決まってる。
そんなことなくない。
お前が知らないだけで、アイツらの口の軽さ舐めんなよ?
言った覚えのないヤツが知ってたりするんだからな?
特に花火大会とかだと、普段来ないようなヤツらも来たりして、思った以上に大人数になるんだよ。
しかも、空気に飲まれて、絶対どんちゃん騒ぎになるし…。
そしたら、お前すぐ帰りそうじゃん。
『もう無理…』とか言ってさ…。
久しぶりにお前と会えたのに、お前との思い出作れないのとかヤダ。
ほかのヤツらとは、クラス会での思い出あるのにさ…。
今年会えたのも何かの縁だし、俺のワガママに付き合って?
あとは、待ち合わせか…。
…どうしよ?
家まで迎えに行こうか?
いや……せっかくの花火大会だし、それっぽい感じにしてもいいかなっと思って…。
(彼女が遠慮して拒否る)
(残念そうに)あっ、そう…。
だったら、学校でいい?
正門の前。
時間は6時。
帰りは家まで送ってく。
ダメ!
これだけは絶対譲れない。
会場から離れてるとはいえ、ベロベロに酔ったヤツとかに絡まれるかもしんないじゃん。
自分一人で対処できる?
怪我させられるだけじゃすまないかもしれないけど…。
そうなってもいいって言うの?
夜に連れ回すんだし、守らせてくれよ…。
な?
あっ!
花火大会だからって、浴衣着てきてほしいとかはないから。
自分が動きやすい服でいい。
学校からとっておきの場所まで近いとはいえ、多少歩くし…。
鼻緒で足痛くなったりしたら大変だし…。
はぁ!?
期待なんかしてないっつーの!
バカ言ってんなよな!
(ボソッと)…ちょっとくらいは期待したけど…。
別に何も言ってない!
ただの独り言!
じゃぁ、詳細はあとで連絡する。
またな。