天城レン
voice:天城レン
Zakuro
voice:Zakuro

放置された妹の課題を文句を言いながらも手伝ってくれる兄

【リビングのドアの開閉音】

またゲームしてる…。

なぁ。
そんなに毎日ゲームしてていいのか?

だって、学校から結構な量の課題、出てるだろ?
お前、ちゃんとやってる?

『やってる』って…。
そんな姿、見たことないんだけど?

『俺が寝てる間にやってる』、ねぇ…。
いつもお前そう言いながら、ギリギリまでやらないじゃん。

で、最終的に、俺に泣きついてくるじゃん。
『助けて、お兄ちゃん!』って。
違う?

あっ、そう。
まぁ、今回は『やってる』ってさっき自分で言ったから、俺は手伝わないからな。

【スマホの通知音】

どうした?
学校から何か連絡でもあったか?

へぇ。
学校始まるんだ。

よかったな。
ずっと『友達に会いたい』って言ってたから。
やっと会えるじゃん。

ん?
何?

『助けて』?
ゲームなら手伝えないぞ?

『課題、手伝って!』、ねぇ。
さっき自分で『やってる』って言ったじゃん。
俺が手伝うことなんてないだろ?

(意地悪いじわる)、言ってないし。

(溜息)はぁ…。
ったく…。
本当に毎回毎回どうしてお前はギリギリまで課題をやらないんだよ…。

遊びたいのは分かる。
その気持ちは痛いほど、よく分かる。
俺だって、休みの時はめちゃくちゃ遊んだ。

でも、俺とお前の違いは、『ちゃんと課題を終わらせてから遊ぶか、放置したまま遊ぶか』なんだよ。

俺は思う存分遊びたいから課題はさっさと終わらせた。
お前は課題よりも遊ぶ方を優先させてるから、あとで痛い()()うんだよ。
今回は自分の力でなんとかしろ。
俺は手伝わないからな。

あのなぁ…。
(うる)ませて『お願い』って言うなよ…。
俺がその顔に弱いの知っててやってるだろ…。

ってか、お前、その顔、(そと)でやったりしてないよな?

…してないならいいんだ。

そんなお願いの(仕方しかた)、絶対(そと)でやるなよ?
いいな?

(妹には聞こえないくらいの小声で)
あんな顔を(そと)で見せたら、いつ悪い虫が()くか分からないからな…。

ん?
なんでもない。

で、課題は?
早く持ってこいよ。

(少し間を開ける)

はぁ!?
こんなにあるのかよ…。

もしかしなくても、全然手をつけてないな?

(溜息)はぁ…。

()(いもうと)ながら、本当に(なさ)けない…。

『ごめん』って(あやま)るなら、ゲームしてないで課題やれよ。
ほんとに、もう…。

課題手伝う(報酬ほうしゅう)は?

手伝うんだから、何かしらの(報酬ほうしゅう)はあってしかるべきだと思うけど?
ないなら、手伝わない。

…『アイス』ねぇ。
1個だけ?

1週間分のハーゲンダッツのバニラ買ってくるなら手伝ってやらなくもないけど?

交渉成立だな。

今回はアイスに(めん)じて、課題を手伝ってやる。
でも、次はないからな。
覚えとけよ。

ほら、じっとしてないで、手を動かせ。
さっさと終わらせるぞ。

今日は(徹夜てつや)だからな。

【ページめくる音】
【ペンで文字を書く音】

(少し間を開ける)

やっと終わったぁ~。
あ゛ぁ゛~、疲れた…。

久々に頭使うとマジで疲れる…。
仕事してる方がずっとマシだわ…。

【ページめくる音】

それにしても、やっぱり(現役げんえき)(はな)れるといろんなこと忘れてるな…。
こんな公式とか全然(記憶きおく)になかったし…。

って、お~い。
起きろぉ~。

(溜息)はぁ…。
気持ちよさそうに寝やがって…。
今日は(徹夜てつや)だって言ったのに…。

これは、お前の課題だろうが。
なんで俺がこんなに必死にならなきゃいけないんだよ。

ったく…。
ちゃんと最後まで手伝ってくれる兄貴なんて、他にはいないんだからな。
感謝しろよ。

ふふ。
寝ながらニヤニヤしてる。
いい夢見てるのかな?
学校で友達と会ってる夢だったりして。

ゆっくり休めよ。
おやすみ。