ひょん
voice:ひょん

弱音を吐かない先輩と弱音を聞きたい後輩

先輩、お待たせしました!

って、どうしました?

『何?』って泣いてたでしょ。
嘘、かないでください。

ほら、ここ。
涙のあと
目もこすったから赤くなってるし…。

…何か悲しいこと、ありましたか?
泣きたくなるようなこと、ありましたか?

『何もない』って…。
何もなくて、泣く人がいますか?

『目にごみが入った』?
その言い訳、この間、聞きましたよ。

……俺、そんなに頼りないですか?

最近、俺がいない時、いつも先輩泣いてますよね。
俺が知らないと思ってました?

まず、一昨日おととい
俺の委員会が終わるの待ってくれてる時。
待ち合わせの教室に行って、先輩を驚かせようとこっそり様子をうかがっていたら、嗚咽おえつが聞こえたんです。
聞き間違いじゃないですよ。
あれは先輩の声でした。

その前は五日前。
俺が部活終わって先輩を教室までむかえに行った時。
カーテンにくるまって泣いてた。
夕日に照らされて、泣いてる姿が影になってて、丸見えでしたよ。

先週も、先々週も…。
泣いてる姿、見てました。

…ねぇ、先輩。
先輩の涙の理由、聞いてもいいですか?
俺が聞いたところで解決しないかもしれないけど、先輩のかかえてる苦しみを半分俺に分けてください。
先輩の苦しみを俺も一緒に背負せおいますから。

ね?

(先輩を抱きしめる)

(耳元で)
……お願い。

(相槌を数回)

そっか…。
つらかったですね。
いっぱい泣いちゃいましょう。
今、ここにいるのは俺達だけ。

胸にんじゃったモヤモヤをしちゃっていいですよ。

俺、全部受け止めますから。
先輩の苦しいのも、悲しいのも全部。

(先輩が泣きだす)

よしよし。
つらかったですね。
苦しかったですね。
いっぱい泣いて楽になりましょうね。

(間を開ける)

泣きみました?
少しはスッキリしましたか?

…よかった。
俺、こんなことしかできないから。
全然 たよりなくて、ごめんなさい。

先輩がこんなに我慢がまんしちゃう人だと思わなかったです。
いつもニコニコしてるから、見逃みのがしてました。

今度からは目を離さないようにしますね。
先輩が卒業するまで、ずっと見てます。
そしたら、先輩のわずかな変化も見逃みのがさないでいられるでしょ?

『ストーカーみたい』?
そうかもしれませんね。

先輩が朝起きてから夜寝るまで、一分、一秒たりとものがさず、ずっと見ていたいんです。

今回のことで、先輩は悩みとかあってもんじゃうタイプで、自分の思いをまわりに言い出すのが下手へたくそだっていうことを知れて、正直すごく嬉しいです。
誰も知らない先輩を俺だけが知ってるから。

(優しく言い聞かせるような感じで)
だから、俺だけには言ってください。
聞くことしかできないけど、俺は先輩の彼氏だから。
先輩の苦しみや悲しみを一緒に背負うから。
時には、今日みたいに泣かせてあげることもできるから。
限界が来る前に、俺に言ってください。

いいですね?
約束ですよ?

(話を切り替える感じで)
あっ!
それから先輩が泣いたことは、誰にも話さないので安心してください。
俺だけの秘密にします。
こんなかわいい先輩を誰にも教えたくないですから。

俺だけが先輩の泣き顔を知ってる。
これは彼氏の特権です。

ねぇ、先輩。
もう一回ギューってしていいですか?

(先輩を抱きしめる)

俺、先輩にもっと頼ってもらえる彼氏になります。
だから、先輩ももっと俺に甘えてくださいね。