看護師に不安をぶつけながらも立ち直る入院中の青年患者

【病室のドアを開ける音】

やっと来た…。

来るの遅い!
ナースコール押したら、すぐ来てって言ったじゃん。

っていうか、俺の担当看護師、なんであの人なの?
俺、ずっとお姉さんに『担当になって』って言ってるじゃん。

お姉さんじゃなきゃ、ヤダ。

(子供が駄々こねる感じで)
ヤダ。ヤダ。ヤダ。ヤダ。

お願い。
俺の担当になって?

どうしてもダメ?

…じゃぁ、今度俺が師長しちょう直談判じかだんぱんするからいい。
『俺の担当をお姉さんにしてください』って。

患者の言うことなら病院側だって聞かなきゃいけないでしょ?
無理難題むりなんだい言ってるわけじゃないんだし、いいよね?

(楽しそうに)
明日にでも、直談判じかだんぱんしにナースステーションに行こうかな。

あっ!
ねぇ、これから外に行こうよ。
晴れてるし、暖かいから気持ちいいと思うんだ。
この間、一人で外に出たら怒られたから、お姉さんついて来てよ。

お願い。
どうしても外に行きたいんだ。

ありがと。
行こっ!

(外に出る)

ん~!気持ちいい。
やっぱり病室よりずっといいね。

あそこのベンチに座ろうよ。

よいしょ…っと。

ん?
『何かあった?』って、どうして?

めてる感じ』?

(溜息)はぁ…。
…バレない自信あったんだけどなぁ。
お姉さんにはかなわないや…。

(ぽつり、ぽつりと話す感じで)
俺ね、もう走れないんだって。
さっき先生に言われた。
現役復帰は絶望的だって。
『リハビリとかしても無理なのか』ってがったんだけど、『怪我けがの前の状態に戻ることは不可能だ』ってはっきり言われちゃった。

お姉さんは知らないと思うけど、俺、そこそこ有名な選手だったんだ。
試合中の怪我けがでここに運ばれてきて、緊急手術して…。
目が覚めて、動こうとしたら、足が動かないじゃん。
手術直後だから当然なんだけどさ。
その時は手術したって知らなかったから絶望して、目の前真っ暗。

術後の俺の様子を見に来る看護師や見舞いにくる誰もが『大丈夫だよ。リハビリさえがんばれば、また走れるようになるよ』ってテンプレな台詞せりふばかり。

リハビリがつらくてもがんばってるのに、『もっとがんばれ』って言ってくる。
『何も知らないくせに…』って、うんざりしちゃったんだ。

でもお姉さんは違った。
『よくがんばったね』って言ってくれた。
リハビリがんばってるの、認めてくれた。
その一言が、すごい嬉しかった。

だから、お姉さんに俺が試合に出てるところ見てもらいたくて、つらいリハビリも、もっとがんばるようになったんだ。
いつか現役復帰した時、『俺、かっこいいだろ!』って言ってやりたくて…。
でも、それすらかなわなくなっちゃった。

『日常生活を送るぶんには支障はない』って言われたから、それだけは救いだったけど。
もう走れないのは本当につらい。
俺にとって、走ることは生きることだから『何を生き甲斐にしていけばいいんだろう』って、ずっと考えてるんだけど、全然分からない。

せっかく晴れてて気持ちいいこの空も、モノクロにしか見えない。

何?
ででてくれるの?

子供 あつかいしないでよ。
泣いてないし。

…泣かないもん。
俺、男だから、泣かないもん。
泣かない…。

(泣きながら)
俺、生きてていいのかな?
走れない俺に、価値はあるのかな?
どうやってこれから生きていけばいいのかな?

(泣いたまま、少し間を開ける)

サポート?
お姉さんが言ってるのって、マネージャーのこと?
試合には出られないけど、みんなのサポートをするの…?

俺にマネージャー、つとまるかな?
ちゃんとみんなをサポートできるかな?

(数回相槌をうつ)

ありがとう。
俺のペースでゆっくりやってみる。

お姉さんに話してよかった。
お姉さんなら馬鹿にしないで、ちゃんと俺の話聞いてくれるって思ってたから。
本当にありがとう。

(強い意志を胸に抱いた感じで)
でも、俺、やっぱり選手として戻りたい気持ちも捨てきれない。
だから、やれるだけやってみようと思うんだ。
現役復帰は絶望的でも絶対にできないわけじゃない。
もしかしたら復帰できるかもしれない。

そのためのリハビリは、今以上にめちゃくちゃつらいと思う。
覚悟はできてるんだ。

全部やって、それでもできなかったらいさぎよあきらめる。
それまでは精一杯やってみる。

もし、現役復帰できて、試合に出られるようになったら、お姉さん、俺の試合見に来てくれる?

本当!?
絶対だよ。
約束ね。

俺、めちゃくちゃがんばるから。
見ててね。