(会議室にて)
(ドアをノックする音)
失礼しまーす。
ここに先輩は……あっ!いた!
先輩、やっと見つけたぁ…。
ずっと探してたんすよ。
この書類、急ぎで確認してもらわなきゃいけなくて…。
今すぐ確認してもらってもいいっすか?
(先輩、「会議の準備をしないといけない」と言う)
『会議の準備』?
先輩が持ってる資料をテーブルに配置していけばいいんすか?
だったら、俺やりますよ。
その間に確認お願いします。
忙しいのに、すみません…。
(後輩、先輩から資料を受け取り、配り始める)
(先輩、確認し始める)
ねぇ、ねぇ、先輩。
ずっと聞きたかったことがあるんすけど、単刀直入に聞いていいっすか?
……最近、俺のこと避けてるでしょ?
そんなことなくないっす。
前までなら『ちょっと会議室にいるから何かあったら呼んで』って一言声かけてから行ってたのに、今では気配消してスゥーっといなくなって……居場所が分かんなくて、どれだけ探したと思います?
それに、ここんとこ、話してても全然目合わせてくれなくなったし…。
(慌てて否定する感じで)別に怒ってるわけじゃないんすよ。
(シュンとして)どっちかっていうと、悲しいとか寂しいとか、そういう感じで…。
先輩って、誰かと話す時、絶対相手の目を見て話すんすよ。
作業の途中とかでも手を止めて、相手の目を見て話を聞いてくれる。
だけど、俺と話す時は何かやりながらだったり、視線を泳がせてたり…。
今だって、そうっす。
資料なんか見てないくせに、視線は資料の方に向いたまま…。
なんでっすか?
俺、先輩に避けられるようなことしました?
まぁ、思いつくこととしたら……マッチングアプリ使ってストーカーみたいなことしたからとか、ほかにも山ほど出てくるけど…。
(後輩、先輩に近づき、手をつかむ)
嫌いなら『嫌い』って、近づかないでほしいなら『近づかないで』って、はっきりと言ってくれませんか?
じゃないと、俺、バカだから全然気付かないっすよ…。
ヤダ。
離さないっす。
こうでもしなきゃ、先輩、逃げるばっかで俺と真正面からぶつかってくれないじゃないっすか…。
…もう一度聞きます。
なんで俺のこと避けるんすか?
謝るんじゃなくて、俺を避ける理由を教えてください。
こういうことをしたら余計に先輩に嫌われるって分かってるけど、教えてくれるまで手離さないっすから。
(先輩、後輩のことが気になり始めたことを白状する)
……俺のこと、意識し始めてくれてたんすか?
…ほんとに?
今までただの後輩だったのに?
(先輩、話を変えるように手を離すよう伝えてくる)
……『手』?
あっ!ごめんなさい!
(後輩、先輩の手を離す)
……ふふ。
真っ赤になってる先輩、かわいい。
…ヤバい……嬉しすぎて今すぐ抱きしめたい…。
(先輩、全力で拒否る)
しない!
しないっす!
抱きしめたりなんか!
もしも、ここで抱きしめてるのを誰かに見られたら、完全に俺が先輩にセクハラしてるように見えるじゃないっすか。
そしたら、最悪会社辞めなきゃなんなくなって、一日中先輩と一緒にいられなくなる…。
そんなの、絶対イヤっすもん。
だから、今は我慢します。
……というか、先輩、俺のことまだちゃんと好きじゃないっすよね?
意識してるだけで。
だったら、余計に抱きしめるの我慢します。
先輩が俺のことちゃんと好きになってくれた時までね。
確認、終わりました?
大丈夫っすか?
よかったぁー。
じゃぁ、これで提出しちゃいますね。
まだ資料全部配り終わってないんで、続きお願いします。
会議の準備、がんばってくださいね。
(後輩、会議室から退室)