狂おしいほど愛してる

(男、目が覚める)

(寝ぼけた感じで)……ん……ここは…?

手が……(一気に覚醒して)えっ……嘘…っ!?
手錠!?

(監禁されている部屋の扉の開閉音)

(女性登場)

あの……貴方が俺をここに連れてきた人ですか?

手錠、外してください。
(もがきながら)これじゃ、動けないんですけど…。

いやいや……怪しい動きなんてしてないじゃないですか。
ただ、もがいてただけですよ。
拘束されて喜ぶような変態ではありません。

俺から言わせれば、貴方の方が怪しさ120%ですって。
意識を失わせて拉致った挙げ句、監禁してるんですから…。

何が目的ですか?
身代金目的なら、やめた方がいいですよ。
身代金を出してくれる家族も友人もいないので…。

俺の命!?

いや、いや、いや…。
いくらなんでも冗談がすぎますって…。

……ほんと?
ほんとのほんとに?

生まれてから今まで、人様に迷惑をかけるようなこともせずに、真っ当に生きてきたつもりです。
恨みや妬みを買うようなこともない、ゲームで言うところの、平々凡々と過ごしているモブAみたいな生き方です。
なのに、なんで貴方に命を狙われなきゃならないんです?
貴方とは今会ったばかりじゃないですか。
さすがにきちんと説明してもらわないと納得できません。

……納得したとしても、命はあげませんけど…。

(相槌数回)

…なるほど。
要は、俺を殺したいほど愛してるということで間違いないですか?

……一応、ありがとうございます。

殺したいほど愛してるっていうのは理解できないですが、好きになってもらってイヤな気持ちになることはないでしょ?
この地球上に何十億と人間がいる中で、俺を選んでくれたんですから。

とはいえ、殺していいという理由にはなりませんからね?
俺はまだ生きていたい…。

やり残したことがあるんです。

……これ以上は、秘密です。

あの……すみません。
トイレに、行かせてください。

実は目が覚めてから、ずっと我慢してたんで、限界です…!

お願いだから、手錠を外してください。
トイレしている間だけでいいので…。

お願い!
早くして!
もう漏れちゃう!

(彼女、手錠を外そうと彼に近づく)

(彼、自ら手錠を外し、彼女に付ける)

ふふ。
残念でした。

やっぱり素人ですね。
この程度の手錠の鍵、簡単に解除できちゃいます。
もっと複雑なものを使わないと、ダメですよ?

あと、人を信じることは素敵なことですが、簡単にターゲットの言葉を信じちゃダメです。

えぇ。
トイレに行きたいなんて、嘘です。

そもそも、意識を飛ばしてません。
わざと貴方に捕まって、目を瞑ったままここに運ばれてきただけ。
抵抗しようと思えばできたんですが、きっと貴方なら素敵な隠れ家を準備していると思ったので、あえてされるがままでいたんです。

最初から最後まで、貴方は俺の手のひらの上で踊らされていたんですよ。

『どうして』?

おかしなことをききますね。

(耳元で)貴方と同じですよ。
貴方のことが好きだから。
それだけです。

ただ違うのは、殺したいとは思わないことでしょうか。

どちらかというと、俺は(手枷てかせ)(足枷あしかせ)を付けて、誰の目にも触れられないような場所に閉じ込めておきたいですね。
トイレもお風呂も食事も……全部俺が面倒見てあげて、俺なしじゃ生きていけないと……依存させたい。

『狂ってる』?

その言葉、そっくりそのままお返しします。

(嬉しそうに)さて、二人だけの生活の始まりですね。
同じ穴のムジナ同士、これからよろしくお願いします。