ひろたろうボイス
voice:ひろたろうボイス

おやすみ前のチョコレートリキュール

(お風呂から出てくる)

ふぅ…。
いい湯だったぁ…。

ねぇ?
この後ってさ、歯磨いて、寝るだけ?
ほかに何かやる予定ある?

 (彼女:「特に何もないけど…」)

じゃぁ、ちょっとだけ俺に付き合ってくんない?

 (彼女:「何するの?」)

(たい)したことじゃないよ。
(晩酌ばんしゃく)に付き合ってほしいだけ。

 (彼女:「…晩酌?」)

うん。
仕事帰りにおいしそうなお酒見つけたんだ。

じゃぁーんっ!
チョコレートリキュール!

この間バレンタインだったじゃん?
その売れ残りだと思うんだけど、安売りされててさ…。
最近疲れててちょうど甘い物欲しかったし、なんとなく今日は飲みたい気分だったから買ってみたんだ。

 (彼女:「あっ!バレンタイン…。ごめん…何も用意してなくて…」)

別にいいって。
謝んないで。

日付感覚(くる)うくらい毎日忙しかったんだし、バレンタインにチョコ貰えなかったくらいで、怒ったりしないよ。
そこまで(うつわ)小さくないもん。

それに、バレンタインに男から贈ろうが、女から贈ろうが関係なくない?
大事なのは相手のことを思う気持ちじゃん?

ってことで、ちょっと待ってて。
すぐ作ってくるから。

(彼氏:キッチン、彼女:リビング 2人の間に少し距離あり)

 (彼女:「こんな遅い時間に甘いお酒とか…カロリーが…」)

『カロリーが…』なんて(野暮やぼ)なことは言わないの。
たまには自分へのご褒美も大事だよ?
いつもがんばりすぎるくらいがんばってんだしさ…。

 (彼女:「何も言ってないのに、何で分かるの?」)

そんなの、君のこと見てれば分かるよ。
身も心もズタボロなのは(一目瞭然いちもくりょうぜん)だったよ。

どうせ誰の手も借りずに、自分のこと追い込んでたんでしょ?

 (彼女:「そんなことないよ」)

そんなことなくない。
誰かに助けてもらってたら、そこまでひどい状態になんかなんないもん。

自分を追い込むのも必要な時はあるけど、君のは()を越えてんの。
悪い癖だから、少しずつでいいから直そ?
じゃないと、いつか潰れるよ?
潰れてからじゃ遅いんだからね?

 (彼女:「…分かった。やってみる」)

(カップを手にリビングに戻る)

ん。
お待たせ。

熱いから、舌ヤケドしないようにね?

 (彼女:「あったかい…ホットミルク割り?」)

そ。
今夜は冷えるし、ホットミルク割りにしてみた。
適当に割ってみたから、アルコール度数高かったらごめん…。

(ひと口飲む)

んーっ!
うまっ!
こういう甘い系の酒ってあんまり飲まないけど、たまにはいいかも。
疲れて甘い物欲しい時とか最高…!

どう?
おいしい?

 (彼女:「うん。おいしい」)

そっか…よかった…。

これ飲んだら、一緒に歯磨きして、一緒に寝よっか?

 (彼女:「ヤダ。いつも通り別々でいいじゃん」)

えぇー!?
ヤダ…。
今日は一緒に寝たい。

いいじゃん。
たまには俺だって一緒に寝たい時があるの。

ここんとこ、今日みたいにゆっくり話す時間もなかったじゃん?
俺の中の君が足りないんだもん。
だから、一晩かけて充電させて。

でも、君がどうしても別々で寝たいって言うなら別々でもいいよ。
その代わり、次の休みの日、大変なことになっても知らないからね?

 (彼女:「脅しとかズルい…」)

(おど)しなんて人聞き悪いなぁ。
正当な取引じゃん。

まぁ、選択肢はひとつしかなかったけど…。

とりあえず、今日は何もしないから。
ゆっくり体も心も休ませよう?
一緒に。

…ね?