(男友達から電話がかかってくる)
【スマホの着信音】
お~、どうした?
飲み会?
行く!行く!
何時から?
もうやってるの!?
もっと早い時間に連絡してこいよ。
いつもの店?
了解!
じゃぁ、また後で。
(電話を切る)
あっ、俺 晩飯いらない。
今飲み会に誘われたから行ってくる。
『もう作っちゃったじゃん!』って、怒られても仕方ないじゃん。
今連絡来たんだから。
帰りの時間?
…そんなに遅くならないように帰ってくるつもりだけど、分かんねぇよ。
時間なんか気にして飲んでたら、うまい酒も不味くなるだろ。
それくらい、分かれよ…。
じゃぁ、行ってくる。
【玄関ドアの開閉音】
(間を開ける)
【玄関ドアの開閉音】
(小声で)
ただいまぁ~。
こんな時間まで飲んでたからさすがに寝てるか…。
【電気のスイッチを押す音】
えっ…まだ起きてたの?
もう日付変わる時間だけど…。
お前、明日も仕事だって言ってなかったっけ?
それなら早く寝ろよ。
俺、明日休みだから別に夜更かししても大丈夫だし。
……暗い顔してどうした?
俺がいない間に何かあった?
はぁ!?
『俺がお前に飽きたんじゃないか?』って…。
何それ…。
何がどうなれば、そんな思考になるんだか…。
俺にはさっぱり理解できないわ…。
『そういうところ』って、どういうところ?
…『冷たい態度とか言い方』?
これは出会った時からずっとじゃん。
変わってないじゃん。
逆に、今更すぎるだろ。
『最初から私に興味なかったでしょ』?
…お前、それ本気で言ってる?
そんなわけないだろ…。
いい加減にしないと怒るぞ?
俺がお前に、いつ『飽きた』って言った?
言ったことないよな?
いつ『最初から興味ない』って言った?
言ったことないよな?
そもそも、俺、お前のこと、ちゃんと好きだわ。
俺が好きじゃない奴と付き合うわけないって、お前が一番よく知ってるはずじゃん。
……なぁ。
俺たちの最初の出会い覚えてるか?
合コンだったの、覚えてる?
俺は行きたくもないのに、数合わせで無理矢理参加させられて。
いくら嫌々でも、その場の空気ってあるじゃん?
『空気悪くならないようにしないと…』って、外面よくして、笑ったり、話合わせたりしてた。
女子側にも俺と同じような奴がいて。
そいつは嫌々って感じを態度に出したまま、離れたところで一人で酒 煽ってて。
それがお前。
すげぇハイペースでグラス空けてたの、今でも鮮明に覚えてる。
俺がトイレに立った時、ちょうどお前とトイレの前で鉢合わせになって。
あの時、お前、俺に言った言葉覚えてる?
『外面ばっかよくて、気持ち悪い』って言ったんだぜ?
俺が外面よくしてることに、あの場にいた誰も気づいてなかったのに、お前にバレてたのがすごい恥ずかしくて。
でも、それと同時にすげぇ嬉しかった。
『こいつは、ちゃんと俺を見てくれてるんだ』って思ったから。
で、そのあと、お前 酔い潰れて、ぐっすり夢の中じゃん?
誰も引き取ろうとしないから、とりあえず俺が自分の家まで連れて帰ったってわけ。
そのあとは覚えてるだろ?
翌朝起きたお前に告って、振られて…。
ちなみに、俺、人生で告ったのも、振られたのも、お前が初めてだから。
見事に振ってくれたよなぁ。
『あなたなんか嫌いです!』ってハッキリ言われたの初めてだった。
逆にそれで火がついて、あれこれ作戦 練って、ようやくお前を手に入れたんだぜ?
そんな俺がお前に飽きる?
お前のことが好きじゃない?
…あり得ねぇ。
さっきも言ったけど、お前のことちゃんと好きだし。
ん。これ。
ほら、受け取れよ。
晩飯作ってくれたのに、飲み会行って無駄にしたから……詫びの品。
お前が好きなプリン、買ってきた。
(彼女に聞こえないくらい小声で)
好きじゃなきゃ好みとか覚えてねぇよ。
何も言ってねぇよ。
悪いと思ってなきゃ買ってこねぇから。
ありがたく受け取っとけ。
今 食う?
明日 食う?
今ね。
じゃぁ、冷えてるうちにさっさと食っちまえ。
『はい』って……何?
食えって?
一人で食えよ。
お前のために買ってきたんだから。
『おすそ分け』って…。
あ゛ぁ゛~、もう!
分かったよ!
あ~ん。
……美味いな、このプリン。
お前が好きなだけあるわ。
また今度買ってくる。
…ごめんな。
不安にさせて。
もう夜も遅いし、寝よう。
早く寝ないと朝起きれなくなるぞ?
今日は特別に腕枕してやる。
ずっと寂しい思いさせてたから、今夜はいっぱい甘えさせてやるよ。
(リップ音)