ふたたび るびぃ
voice:ふたたび るびぃ

彼女のサプライズに逆サプライズで反撃する彼氏

【玄関の開閉音】

(溜息)疲れたぁ…。
さっさと風呂入って寝よ…って、何これ…?

こんな箱、家出る時にはなかったのに…。
鍵もかかってたし、誰かが家に入ることもないはず…。
えっ…マジ怖いんだけど…。

(箱の中から物音がする)

うわっ…中から何か音した…。
開けないといけないよな…。
開けたくないなぁ…。

(おそるおそる箱を開ける)

えっ…君が…?
どうして、ここに?
って、ぐっすり寝てるし…。

ちょっと!
こんなところで寝ないで。
風邪ひくよ。
ねぇ…起きてってばっ!

…おはよ。

いつまでも箱の中に入ってないで、出ておいで。
まったく、もう…。
体、冷えてるじゃん。
あぁ…もぅ…くしゃみしてるし…。

暖房もつけずに、こんなところで寝てるから風邪ひき始めたんじゃない?

おでこ(さわ)るよ?
熱は……なさそうだけど、一応俺のコート着といて。

(暖房のスイッチを入れる)

今、暖房入れたばっかで、部屋暖かくなるまでもう少し待ってて。

あっ!
肩にかけるだけじゃダメでしょ。
ちゃんと(そで)通して着なきゃ。

(彼女にコートを着せる)

『あったかい』?
そりゃ今まで着てたからね。

ソファーに座ってて。
あったかい飲み物用意するから。

んーと……あ゛っ…。
あったかい物って紅茶しかないけど、いい?
ココア買ってくるの忘れてた…。
ごめんね。
次来る時までには用意しとくよ。

じゃぁ、すぐ紅茶持っていくから。
ちょっとだけ待っててね。

(少し間を開ける)

はい、お待たせ。
熱いから、舌、(火傷やけど)しないように気を付けて。

それにしても、どうしてあんな箱の中に入ってたの?

『驚かせたかった』って…。
まぁ、ちょっとは驚いたけど、どちらかというと怖かったかな。

だって、朝家出た時にはなかった物が、帰ってきたらあるんだもん。
びっくりするより怖いって。

あれ?
コート脱いでるけど、暑くなってきた?

体、少しは温まってきた証拠かな。
よかった。

ほら、()して。
ハンガーにかけとくから。

そういえばさ、あの箱の中で何時間待ってたわけ?

はぁ!?
バカなの?

そんなに長い間、冷え切った部屋の中でたった1枚のコートだけでいたら風邪ひくじゃん。

今夜は()まっていって。
これは命令。

『えぇー』じゃない。
このまま帰したら俺が不安なの。
今は元気かもしれないけど、時間が()ってから調子崩すかもしれないでしょ。
『風邪ひいてないかな』とか『熱出してないかな』とか、いろいろ考え始めると眠れなくなるんだよ…。

笑わないでよ…。
それだけ君のことでいっぱいなの。

だから、今夜は俺と一緒にいてよ。
…お願い。

やった!
()まり決定ね。

うぉっ!?
びっくりしたぁ…。
大きな声出してどうしたの?

着替え?

それは大丈夫だよ。
この前来た時に、お()まりセット持ってきてたじゃん。
『いつでもお()まりしたいから持ってきた』って自分で言ったの、忘れた?
もう…忘れちゃダメでしょ。
大事なことなんだから。

ふふ。
平日なのに、お()まりしていけるのって、まるで同棲してるみたいでドキドキするね。

俺の家から君の会社に行くのって初めてじゃん?
『なんかいいなぁ』って思っちゃった。

…この際だし、同棲始めちゃう?

俺はいつでもいいんだよ?
同棲するの。

ごめん、ごめん。
困らせるつもりなかったんだ。

大丈夫。
俺はいつまでも待つから。
君が同棲してもいいって思える日まで。

……とりあえず、今日は同棲の予行練習いっぱいしよう。
本番の日のためにね。