今まで隠していた本性を見せる憧れのお兄ちゃん

(クラクション)

今から帰るの?

なら、送ってくよ。

いいって。
この暑い中駅まで重い荷物持って歩くの、大変でしょ?

車の中、クーラー効いてるよ?
すっごく涼しいよ?

……どうする?

(彼女が車に乗る)

(車を発進させる)

何時の電車で帰るの?

じゃぁ、まだ時間あるし、ちょっとだけ遠回りしてってもいい?
話したいことがあって…。

うん。
あの時の告白の返事。

答え出てたら帰る前に聞いときたくて…。

……答え、出た?

(まだ悩んでいると言う彼女)

そっか…。
まだ悩んでるか…。

うぅん。
ゆっくり考えてくれていいよ。

僕の方こそごめんね。
「いつか聞かせて」って言ったくせに、君が答えを出すまで全然待てなかった。

怒る?
僕が?

…なんで?
君が怒るならまだしも、僕が怒ったりなんかしないよ。

だって、悩んでるってことは、それだけ君の頭の中も、心も全部僕でいっぱいにできてるってことでしょ?
僕のことを男として意識してくれた上で…。

それって、ある意味君の全部を独占してるようなものじゃん?
これの何を怒ればいいのか、僕には分かんない。

独占欲…?
…人並みくらいだと思うけど、目に見える独占は好きじゃないから、しない。

そ。
「今、どこに誰といるの?」とか「遊びに行くのは、ほんとに女の子だけ?実は男もいたりしない?」とか…。
そういうのは好きじゃない。
僕がされたくないから。
自分がされてイヤなことは、絶対にしない。

でも、無意識下では独占したい……かな。
気付けば僕のことを考えてる…みたいな、ね。

そういうの、たまんない。
「もっと僕でいっぱいになればいいのに…」「僕ナシじゃ生きられなくなっちゃえばいいのに…」って思っちゃう。

(笑いながら)……『ほんとに!?』って顔してる。
ただただ優しいだけのお兄ちゃんだと思ってた?

残念ながら、君の期待を裏切るような人間なんだよね。

正直言うとね、このまま君を(さら)って、一人暮らししてる僕の家に監禁してしまいたい。

(彼女が車から降りようとする)

(慌てて)待って。待って。
ちゃんと駅で下ろしてあげるから、車が走ってる間は大人しくしてて。

こっちに帰ってきてから、たまにではあるけど会えてたじゃん?
またしばらく会えなくなると思うと、寂しくてさ…。

……今度、会いに行ってもいい?

もちろん、仕事はちゃんとするよ。
するけど……どうしても君が足りなくなる時があるんだよ…。
がんばったり、忙しかったりすると、特にね…。

君の都合を優先するし……ダメ?
好きなスイーツもたくさん買っていくよ?

(意地悪な悪いお兄ちゃんになって)ふふ。
モノで釣って、会える時間を増やしてから、僕のことをもっと意識させようって作戦……バレちゃったか…。

(拗ねて)いいよーだ。
勝手に、いっぱい会いに行ってやる。

(駅に到着)

(車を停車させる)

あーぁ…着いちゃった…。
「永遠に続け…!」って思う時間ほど、あっという間に過ぎてくの、どうにかなんないかな…?
せっかく超遠回りなルート通ったのに…。

僕の気持ちも、優しいだけのお兄ちゃんじゃないってこともバレたし、これからは全力で攻めていくから覚悟してて。
本気の大人の恋、少しずつ教えてあげる。

(優しいお兄ちゃんに戻って)ほら。
そろそろ行かないと電車きちゃうよ?

大丈夫だとは思うけど、電車乗り違えたりしないように、気を付けてね。

じゃぁ、またね。
バイバイ。