（お姉さんが風呂から出てくる）
（彼女：「お風呂ありがと」）
（びっくりして）うぉっ！！
びっくりしたぁ…。
すいません。
部屋の掃除してて、お姉さんが風呂から出たの、全然気付かなかったっす…。
風呂、ゆっくりできました？
（彼女：「うん。入浴剤、すごくいい匂いだね。気に入っちゃった」）
そうっすか。
入浴剤、気に入ってもらえてよかったっす。
あれ、俺のイチオシなんすよ。
アロマの効果？とかで、リラックスできるらしくて…。
あとは、美肌効果もあるみたいっす。
まだ数回しか使ったことないで、効果は分かんないんすけど…。
（彼女：「美肌…」）
（彼女：笑いを堪えている）
ちょっ…！？
笑わないでくださいよ。
美肌になりたくて買ったわけじゃないっすからね？
リラックス目的で買ったんすから！
（彼女：「分かったって…」）
ほんとに分かってくれたんすか？
まぁ、いいや。
時間も時間だし、そろそろ寝ましょうか。
（彼女：「君はお風呂入らないの？」）
ん？
俺は朝風呂派なんで、起きてから入ります。
夜って、いろいろやらなきゃいけないことあって、風呂入ってる時間ないんすよね…。
（彼女：「そっか…。布団は…？」）
あっ…それで、布団…というか、ベッドは、これ1つっす。
だから、ベッドはお姉さんが使ってください。
俺は、部屋の
（彼女：「それはダメでしょ！」）
大丈夫っす。
（ドヤァな感じで）『どこでも寝られる』っていう特技がありますから。
それに、お姉さんはお客さんなんすよ？
お客さんを床で寝かせるわけにはいかないっす。
（彼女：「でも…」）
いいから、いいから。
ベッド使ってください。
（彼女：「ごめんね…」）
あーっ！
また謝った。
そこは謝るとこじゃなくて…？
（彼女：「…ありがと」）
そ。
よくできました。
じゃぁ、電気消しますね。
おやすみなさい。
（部屋の電気を消す）
（彼女：寝返りばかりうって、寝れない様子）
寝られないっすか？
じゃぁ…眠くなるまで、くだらない話しませんか？
俺も寝れそうにないんで…。
（彼女：「うん」）
さっき『どこでも寝られる』って言ったじゃないすか。
小学生の頃、夏に林間学校みたいなのがあったんすよ。
山でキャンプする、みたいなヤツ。
昼間のうちにテント張って、夜はそこで寝たんすけど、クーラーなくて寝苦しい上に、慣れないテントで寝なきゃいけないってんで、同じ班だったヤツら誰1人として寝らんなかったらしいんすよ。
でも、俺1人だけ3秒で寝入って、朝まで爆睡…。
耳元で叫ばれても、叩かれても、揺すられても、全然起きなかったみたいで…。
大人になったら、そのあたりも成長して「寝らんねー」とか言えるかとも思ったんすけど、全然成長してなくて、
（彼女：「今、寝られないんじゃないの？」）
あっ…言われてみたら、今寝らんないっすね…。
ヤバ…ちょっと嬉しい…。
子供みたいっすけど、何か一歩大人になった気分。
（彼女：笑ってる）
……無理に笑わなくていいっすよ。
顔、引きつってる。
暗くても分かりますよ。
部屋、暗いとやっぱ怖いっすか？
（彼女：「…うん」）
じゃぁ、ちょっとだけ電気点けときますね。
（常夜灯を点ける）
それから…こんなこと、今やるのは逆効果だって分かってるんすけど……手、握っててもいいっすか？
怖い時って誰かが側にいてくれてるって思えるとちょっと安心するから。
（彼女：「うん…」）
（彼女の手を握る）
せっかく風呂入って温まったのに、また冷えてる…。
マジで許せないっす。
ストーカー野郎。
…明日、会社行くんすか？
（彼女：「そのつもりだよ。なんで？」）
いや…だって、仕事する気分にはならなくないかなって思って…。
ここにいれば俺が守ることができるけど、会社だと俺は側にいらんないし、どこでヤツが見てるか分かんないし…。
今日よりもっと怖い思いしないかなって…。
できるなら、休んでほしいっす。
仕事行って、何もなきゃいいけど、もし何かあったら、俺……。
（彼女：「それもそうだね。休もっかな」）
休んでくれるんすか！？
…よかった。
なら、明日お姉さんの家まで送っていきます。
（彼女：「ありがと。でも、学校は？」）
学校？
それは大丈夫っす。
明日は必須の授業じゃないし、ノート写させてもらいます。
あと、バイトもお姉さんの一件が落ち着くまで休ませてもらうことにしました。
ちなみに、店長の許可はもらってあります。
（彼女：「えっ…」）
（ドヤァな感じで）ふふん。
お姉さんが絶対遠慮するって分かってたから、先手取っちゃいました。
（彼女：「これ以上迷惑かけらんないから、いいよ…」）
これは、迷惑とかじゃないっす。
俺がやりたくてやってるだけなんで、お姉さんが気にすることないんすよ。
（彼女：「でも…」）
（彼女：小さく欠伸をする）
やっと眠くなってきた感じっすかね。
今、見逃さなかったっすよ？
お姉さんの
（彼女：「今すぐ忘れてよ」）
イヤっすよ。
忘れるなんてもったいない。
お姉さんのかわいい
（彼女：限界を越えて、眠そうにしている）
ほら。
もう眠いんでしょ？
そのまま目
怖いことはないっすから。
お姉さんが眠るまで手繋いだまま、ずっと俺が側にいます。
（彼女：「約束…だよ…？」）
はい。
約束っす。
…おやすみなさい。