かみしろ
voice:かみしろ

彼女と見る静かな夜の葉桜見物

(彼氏、走る)

(彼女の後ろから声を掛ける)

(彼女を驚かせるように)わっ!
お疲れー。

へへ。
びっくりした?

 (彼女:「うん。びっくりした…」)

サプライズ大成功!

 (彼女:「どこにいたの?」)

駅前のカフェで待ってた。
君の姿にすぐ気付けるように、(窓際まどぎわ)でまったりしながら。

 (彼女:「ずいぶん待ったんじゃない?」)

うぅん。
全然待ってないよ。

 (彼女:「ほんとに?」)

ほんとに、全然待ってないって!

 (彼女:「先に帰ってればよかったのに…」)

…先に帰ってもよかったんだけどね…なんか…一緒に帰りたい気分でさ…。

 (彼女:「急にどうしたの?」)

急な話なんだけど、今からお花見しない?

ほら。
ちょっと前に「お花見したいね」って話してたじゃん。
なのに、それからすぐにお互い忙しくなって、なかなか時間作れずに、気付けば桜の季節ももう終わり…。
ギリギリアウトかもしれないけど……どう?

 (彼女:「うん。いいよ」)

よし!決まり!
家の近くの公園に1本だけ桜があったはずだから、少し遠回りになるけどあそこ寄って帰ろっか。

(こっそり彼女と手を繋ぐ)

ちょっとくらい手繋いだっていいじゃん。
ケチ…。

誰もいなくて、こういうスキンシップ的なのも久しぶり……となれば、こうなるのは必然じゃない?

じゃぁ、手繋ぐのがイヤなら、お姫様抱っこしたまま歩くけど…どっちがいい?

 (彼女:「手繋ぐ…」)

素直でよろしい。

 (彼女:「お姫様抱っこしたまま歩くとか無理じゃない?」)

ん?
お姫様抱っこしたまま歩くくらい楽勝だよ?

(ドヤァな感じで)(何時如何いついか)なる時でも君のことを守れるように、日々(きた)えてますので。

 (彼女:「鍛えてたの?」)

そりゃそうだよ。
しばらく見ないうちにワガママボディになってたら残念じゃない?

 (彼女:「まぁ…少しは…」)

でしょ?

やっぱ好きな子にはかっこいい姿を見てほしいからね。

……なんなら、帰って見せようか?
俺の体。

自分で言うのもなんだけど、君が最後に見た時と比べたら、多少引き締まったと思うんだよね。
いい感じに筋肉がついたと思うし…。

 (彼女:「うぅん。いい」)

…そう…。
遠慮しなくてもいいのにな…。

うぅ…寒…。
あったかくなってきたとはいえ、朝晩は冷えるね。

あっ!
ちょっとここで待ってて。
いい物、買ってくる。

(少し間を開ける)

お待たせ。
はい、コレ。

あったかい紅茶。

俺と繋いでる手は俺があっためてあげられるけど、繋いでない方の手は冷えちゃうでしょ?
俺の代わりにコレ握ってあったまってて。

 (彼女:「…ありがと」)

見えてきたね。

あぁ……やっぱほとんど散っちゃってる…。
最近雨多かったし、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど…。

もう少し早く時間作れたらよかったな…。

 (彼女:「どうして?」)

だって、そしたら満開の桜を一緒に見れたんだよ?
で、お弁当持って見に来てもいいし、お弁当持たずに見に来て、気になったお店に入って見てもいいし…。

(溜息)はぁ…。
その時の楽しみ方ができただろうなぁって思ったら、なんかすっごい残念な気持ちになってきちゃった…。

 (彼女:「じゃぁ、来年は満開の時にお花見しよっか?」)

来年?
マジで!?

行くっ!
絶対一緒に見に来ようね!

 (彼女:「忙しくなかったら、だよ?」)

大丈夫。
仕事忙しくなったとしても、絶対に時間作る!
死ぬ気で片付ければなんとかなる……はず…。
……たぶん…。

でも、満開ではないにしても、今日みたいに葉桜になる前には一緒に花見できるように時間作るから。
一緒に桃色のトンネル、歩こうね。