(彼女を飲み会の店まで送っている)
ねぇ、どこ?
今日の飲み会のお店。
もうちょっと先?
『ここでいい』って、飲み会のお店、このあたりじゃないでしょ。
お店の前まで送ってく。
いいじゃん。
お店まで送ってったって。
お店まで行ったら、何か都合悪いの?
何もないなら、送ってったっていいよね?
そんなに拒否んないでよ…。
普通に
……俺のこと、何だと思ってるの?
ただの人間だよ?
その
別にいいよ。
俺も君の嫌がることしてるんだし、お互い様でしょ。
それより、君も飲み会なんて行くんだね。
ちょっと意外だった。
お酒好きなのは知ってたけど、大人数でわいわいしながら飲むよりは、小人数でしっぽり飲む方が好きだと思ってたから。
ふぅーん。
誘われれば行くんだ。
それって、男とか女とか、年上とか年下とか、全部関係なく、誘われれば行くってこと?
そっか、そっか…。
ちなみに、今日は誰に誘われたの?
へぇー。
後輩ね…。
男?
女?
男か…。
分かってるよ。
2人きりじゃないってことくらい。
ってか、2人きりだったら、今すぐ家に連れて帰るし。
危ない場所に自分の彼女を差し出す彼氏なんかいるわけないじゃん。
あのね、後輩だからって、甘く見てたらいつか絶対痛い目に
お酒の中に薬盛られて、気付いたら知らない場所で…みたいな。
笑い事じゃないんだって。
ドラマみたいなことだけど、現実でもあり得ることなの。
人を信じることはとても素敵なことだと思うけど、もう少し人を疑うことを覚えた方がいいと思うよ。
皆が皆、いい人ってわけじゃないんだから。
あっ!
あっちで手振ってる人がいるけど、飲み会のメンバー?
ほら。
あそこだよ。
そっちじゃなくて、もっと右側の。
(彼女の首にキスマを付けるリップ音)
ごめん。
「手振ってる人がいる」っての嘘。
だから、言ったじゃん。
皆が皆いい人じゃないって。
これで少しは人のこと疑うこと、覚えてくれた?
えぇー!?
それ
俺だけは疑うのはやめてよ…。
嘘ついてごめん!
ごめんなさい!
だから、許して…。
お願い。
キスマ付けた理由答えたら許してくれるの?
…分かった。
答えるけど、笑わないでね?
……後輩を含めた、今日飲み会に来る男全員に対して
君は俺のって、勝手に手出すなって、見れば分かるようにしないと。
男は羊の皮を
どんなに優しい男でも、自分の中に狼を飼ってるんだから。
男を甘く見ちゃダメ。
いい?
だから、これは俺以外の男に食べられないようにするためのおまじない。
ね?
あっ!
こっち見て、手振ってる女の人がいるよ。
嘘じゃないって。
これは、ほんとの話。
もうこれ以上キスマ付けたりしないから。
向こう見てみなよ。
あの人たち、今日の飲み会のメンバー?
そっか。
じゃぁ、ついて行くのはここまでにしといてあげる。
終わったら連絡して。
すぐ迎えに行くから。
ん。
楽しんでおいでね。