ふたたび るびぃ
voice:ふたたび るびぃ
真幸
voice:真幸

先輩にしかコーヒーを淹れない後輩

せーんぱいっ!

お疲れ様です。
(一息ひといき)()れませんか?

はい。
コーヒー。

ちゃんと先輩の好きな味にしてますよ。
砂糖もミルクも多めのコーヒー。

って、もうコーヒーじゃないですけどね、それ。

『じゃぁ、これ何?』って、カフェオレですよ。

あー!
せっかく()れてあげたのに、口答えするんだ。

口答えするなら、もう()れてあげません。
先輩自身で()れてください。

もう口答えしない?
本当に?

仕方ないなぁ…。
許してあげます。

あっ、そうだ。
先輩、これもどうぞ。

先輩、最近このクッキーにハマってるって言ってましたよね。
さっき外に出る用事があったんで、買ってきたんです。

先輩、お昼食べてないでしょ?
知ってますよ。
……だって、見てたから。

お昼に先輩が前から気になってるって言ってたお店、一緒に行こうと思ってたんだけど、忙しそうにパソコンと(にら)めっこしてたから、(さそ)うに(さそ)えなかったんですよ。
おかげで、俺の(昼飯ひるめし)、コンビニ弁当になったんですからね。
朝からめちゃくちゃ楽しみにしてたのに、期待(はず)れもいいとこ…。

どうやって責任取ってくれるんですか?
俺、怒ってるんですからね!

って、人の話全然聞いてないし…。
先輩、俺の話聞いてました?

『何?』って…。

(溜息)はぁ…。
もういいですよ。

先輩って、いい意味でマイペースですよね。
尊敬します。

ん?なんですか?
クッキー食べたまま(しゃべ)らないでくださいって。
何言ってるか分かんない。

『俺の()れるコーヒー、優しい味がする』?

(共同きょうどう)で置いてるコーヒーメーカーから()れてるだけだから、誰が()れても同じですよ。
砂糖もミルクも(共同きょうどう)で使うやつだし。

どちらかというと、誰も飲まない時間の方が長いから、煮詰まった(粗悪そあく)な味しかしてないと思いますけどね…。

『それでも(美味おい)しい』?

ねぇ、先輩。
なにか隠してることとか、謝らなきゃいけないこととかあるんですか?

だって、先輩、そうやって俺を()める時って何かあるんだもん。
前は『仕事手伝って』だったし、その前は『(愚痴ぐち)らせて』だったし…。

で、今回は何?
もう先輩に何言われても驚いたりしないから。
ずばり言ってください。

……『好き』?
先輩が……俺を?

またまたぁ~。
先輩、そうやって俺を驚かそうとしてるんでしょ。

バレバレだし。
もう少し上手にやらないと…。

って、何?
その反応…。

マジなんですか?

嘘……。

ごめん。
先輩。

驚かないって言ったけど、めちゃくちゃ驚いてます。

だって、先輩にそんなこと言われるなんて思ってなかったから。
先輩がそんな(素振そぶ)り見せたこともなかったし。

ずっと俺の片思いだと思ってたから。

めちゃくちゃアピールしまくってたから知ってるでしょ?
俺の気持ち。

えぇ~!?
(あらた)まって言うんですか…。

(真摯な感じで)
俺は先輩のこと好きですよ。
ずっとね。

好きじゃなきゃ、わざわざ残業してまで仕事手伝わないし、飲みに行って(愚痴ぐち)聞いたりしないです。

そんなめんどくさいこと、誰が()(この)んでやりますか?
好きじゃなきゃ絶対やりません。

ずっと先輩のこと見てたから、先輩が疲れたタイミングとか分かるし、先輩の(この)みも知ってます。

もしかして、たまたま知ってたとか思ってませんよね?

(溜息)はぁ…。

たまたまで、先輩の(この)みなんて知れるわけないでしょ。
どれだけ俺が苦労して先輩の(この)みを(把握はあく)したと思ってるんですか!

まぁ、シラフの状態の先輩に聞いたことはないから、知らないのも当然だけど…。
いつも(泥酔でいすい)してる先輩に聞いてたので。

だって、シラフの状態で聞いたら、俺の気持ち(丸分まるわ)かりじゃないですか。
そんなの()ずかしくて、絶対無理!
聞けるわけないでしょ!
俺の性格知ってるくせに!
先輩の意地悪っ!!

(まじめな感じで)
……ねぇ、先輩。
俺の彼女になってくれませんか?
俺なら、先輩の仕事も手伝えるし、先輩の(愚痴ぐち)だって聞きます。
それに、今なら一緒に住む権利も付いてきますよ。

そろそろ更新近いから引っ越そうかなぁって思ってて。
先輩さえよかったら、一緒に住みませんか?

一緒に住むからには、結婚前提として、真剣に付き合ってほしいです。
まぁ、俺としては最初から結婚を前提として付き合いたいって思ってたんだけど、いきなりそれ言っちゃうと先輩引くかなぁって思って…。

俺の全部を見せるから、先輩の全部を俺に見せて?

ふふ。
ありがとうございます。
絶対に幸せにしますから。

先輩、大好きです。