(2人で電車に乗っている)
うわっ…今日、人多いな…。
この時間帯にしては珍しく満員電車だし…。
こっち来い。
俺と場所変われ。
いいから。
ドアに背中つけて立ってろよ。
(彼女に肘ドンしてる)
(以下、全て小声で)
俺の腕の中で大人しくしてろよ。
これだけ混んでるから、お前辛いだろ?
『何が?』って、バレてないと思ってるのかよ。
顔、真っ青。
こんだけ人がいるからいろんな匂いが混じってて、辛いんだろ?
頭髪料やら香水やら制汗剤やら…。
一つ一つはいい匂いでも、混じると臭くなるからな…。
俺もちょっと酔いそう…。
俺ですら、こんななんだから、お前はもっと辛いだろ?
やせ我慢しなくていいから。
素直に言ってみ?
辛いんだろ?
ん、それでいい。
ほら、俺の胸に顔くっつけとけ。
メイクが付くとか気にしなくていいから。
洗えばいいことなんだから。
今は俺のことより自分のこと考えろって。
いいから、ほら!
(彼女の頭を自分の胸にくっつける)
ゆっくり深呼吸して。
吸って。
吐いて。
もう一回、吸って。
吐いて。
こっち向いて?
…まだ青い顔してるけど、少し良くなったかな。
どう?まだ辛い?
駅 着くまで、このまま俺の匂い嗅いどけ。
そしたら少しはマシだろ?
…本当に、お前、俺の匂い好きだな。
前にもお前気持ち悪くなった時、俺の匂い嗅いでたら、少し気分良くなったって言ってたじゃん。
そんなに俺っていい匂いなのか?
(自分の匂いを嗅ぐ)
ん~、自分じゃ全然分からんな…。
あっ!
お前に謝っとかなきゃいけないわ。
今日ずっと歩いてたから汗臭いかも…。
今更だけど、ごめんな。
それもいい匂い?
(笑いながら)
…お前、変態すぎない?
汗臭いのもいい匂いとかヤバくない?
そんな奴だと思わなかったわ。
青い顔しながら怒っても全然怖くないし。
(以下、真面目な感じで)
ごめん。
揶揄いすぎた。
辛いのに、マジでごめんな。
今はお前の全神経を俺に集中させろ。
俺がお前を辛い思いから解放してやるから。
もう少しの辛抱だからな。
がんばれ。