こんにちは。
あぁ…ごめん…。
驚かせちゃった?
不安そうに見えたんだけど…何か困ってる?
僕でよければ力になるよ。
見慣れない顔だけど、この国に来るのは初めて?
そっか…。
それなら仕方ないよね。
この国、ちょっと変わってるから。
僕は生まれも育ちもこの国なんだ。
僕の名前…?
名前は…ないんだ…。
みんなは”白ウサギ”って呼んでる。
ぶっちゃけ、そのまんまじゃない?
もう少し
って、話が脱線しちゃった。
君が困ってること、僕に話して解決できるか分かんないけど、話してみてよ。
(相槌数回打つ)
『元の場所に戻りたい』?
ふふ。
君、おもしろいこと言うね。
戻りたいも、戻りたくないも、ここ以外に国はないよ?
夢でも見てたんじゃない?
あっ!
そうそう。
大事なこと聞くの忘れてた。
君の名前だよ。
名前!
”君”なんて他人行儀な言い方したくないから、教えてよ。
名前、なんて言うの?
…アリス。
ふぅーん。
いい名前だね。
ねぇ、アリス。
僕はこの国から出ていく方法を知ってるよ。
ふふ。
確かに言ったよ。
ここ以外に国はない、ってね。
でも、戻る方法がないとは言ってないよ。
教えてほしいの?
えぇー!?
どうしよっかなぁ?
教えてあげてもいいけど、タダでは教えてあげない。
等価交換じゃなきゃ。
この国から出る情報の代わりに、アリスの持っている物を僕にちょうだい。
えっ……お弁当に入ってるニンジンのグラッセ?
いやいや。
冗談がすぎるでしょ。
いくら僕がウサギだからって、ニンジン1つで情報を売ると思ってるの?
別にニンジンが嫌いとは言ってない!
好きに決まってるじゃん!
ニンジンのグラッセ、超好きだよ!
大好物だよ!
ウサギなんだもん。
ただ、この国から出る情報をニンジン1つで売るには割に合わないって言ってるの!
もっと違う物を提示してくれなきゃ。
『もう何もない』?
そんなことないでしょ。
持ってるじゃん。
アリス……君自身だよ。
アリスをくれるって言うなら、この国から出る情報を教えてあげる。
どう?
僕と取引する気、ある?
ヤダってなんで?
取引しないと戻れないよ?
なーんだ……バレちゃったか…。
ちょっとおバカさんっぽいからイケると思ったのになぁ…。
アリスの言う通り。
教えたとしても、アリスは僕の物になるから元の場所には戻れないよ。
あっ!ちょっと!
…どこに行くの?
『他の人に聞く』?
ふぅーん。
いいよ。
聞いてみればいいよ。
僕以外の誰もこの国から出る方法なんて知らないから。
おっ!
ちょうどいいところにクラブのカードの兵士がやってくる。
ほら、行っておいでよ。
(アリスが兵士と話している)
(しばらくしてアリスが戻ってくる)
どうだった?
アリスの求めている情報は手に入った?
でしょ?
この国を出る方法を知ってるのは僕だけって理解してくれたかな?
それで、どうする?
僕と取引する?
ふふ。
そうこなくっちゃ!
大きい声では言えないから、ちょっと耳貸して。
(耳元で)この国を出るには女王の許可がないと出ることはできないよ。
女王の居場所?
えっと…見えるかな?
あの山の上に建ってる白い大きなお城。
あそこにいるんだ。
行くの?
今から?
やめといた方がいいと思うよ。
最近の女王は機嫌が悪いからね。
アリスのことだから、バカ正直に『この国から出してください』とでも言うつもりなんでしょ?
アリスの素直なところはとてもいいと思う。
けど、時と場合を考えなきゃ…。
じゃないと、こうなるから…。
(白ウサギ、自分の服を捲る)
ひどいでしょ。
この
顔だと女王のパワハラがバレるからって体にね…。
この国は女王が絶対なんだ。
女王が黒を白と言えば、それは白なんだよ。
いてて…。
やっぱり骨にヒビ入ってるのかな?
実は殴られて以降、息するのもつらくて…。
ちょっと肩を貸してくれない?
僕の家まで連れてってほしいんだ。
ね?
お願い。
(舌打ち)チッ
アリス…。
君って、たまに勘が鋭いよね。
いいから、黙って大人しく僕の家においで。
ほらっ、行くよ!
(アリスが逃げる)
あっ!こら!
逃げるなっ!
(逃げたアリスに追いつく)
なーんてね。
ウサギの足の早さに
どこまで逃げても見つけて追いつくよ。
だって、僕はウサギだもん。
触れば痛いけど、普通にしてれば痛くないよ。
さっきのはちょっと
それよりも、情報を与えた見返りはちゃんといただくよ。
絶対に逃がしたりしないからね。
…僕のアリス。