ねぇ。
ねぇってば!
いつまで仕事してるの?
もう日付変わっちゃうよ?
帰ってきて、ご飯食べて、お風呂入って。
それからずっと仕事じゃん!
俺のこと、ほったらかしにして、ずっと仕事。
最近全然会えてないから、せっかく泊まりに来たのに…。
君が、今忙しいの、分かってる。
大事な時期なのも、分かってる。
だけど、少しくらい俺との時間も取ってよ。
さすがに寂しいよ。
5分……いや、3分でいいから!
お願い、俺にかまって?
(彼女に触れるも手を払われる)
痛っ!
手、払いのけることないじゃん!
少しくらい触れたっていいじゃん!
…『邪魔しないで』?
…『勝手に俺が泊まりに来ただけ』?
今そう言った?
(キレて)
あっそう。
そっちがその気ならもういい。
俺、寝るから。
【乱暴なドアを開閉音】
(ベッドにダイブする)
くそっ!
あの言い草、何!?
マジ、むかつく!
明日には別れを切り出してやる!
あんな奴、もう知らない!
(少し冷静になって)
……でも、すごい疲れた顔してた。
無理しすぎてるよなぁ。
晩ご飯、あいつの好きな物たくさん作ったのにほとんど食べてなかったし…。
食事もうまく喉を通らないくらい切羽詰まってるってことなのかな?
話くらいなら聞けるのに…。
(溜息)はぁ…。
一緒に寝れば狭いはずのベッドなのに、今日はやたら広く感じる。
あいつのベッドってこんなに広かったっけ?
一人で寝るの、嫌だな…。
早く来ないかな。
一緒に寝たいな…。
【ガラスが割れる音】
えっ!?何!?
(急いでリビングに移動)
(彼女が倒れている)
ちょっと、大丈夫!?
ねぇ…ねぇってば!
目を開けて!
(ほっぺを叩く音)
あっ、目、開けてくれた。
よかったぁ…。
どこかぶつけてない?
頭痛くない?
足とか腕とか痛くない?
大丈夫?
『何?』って、ガラスが割れた音がして急いできてみたら、君がここに倒れてて、コップの破片が散ってたんだよ。
もしかして、倒れてたの、覚えてないの?
起きられそう?
頭クラクラするの?
それなら、俺が抱えてベッドルームに連れていくね。
そんなふらついた足元じゃ、ガラス踏んで怪我しちゃう。
こら、暴れないの!
まだ仕事しようとしてるの?
もう無理だよ。
君、半分目閉じかかってるもん。
限界超えちゃったんだよ。
体が『休んで』って訴えてる。
ガラスは俺が片付けておくから心配しなくていいよ。
だから休んで。
お願い。
さぁ、ベッドルーム行こうね。
俺の腕の中で大人しくしててね。
(彼女をベッドに下ろす)
よいしょ…っと。
あ~ぁ、幸せそうに寝ちゃって…。
完全に電池切れじゃん。
とうの昔に限界超えちゃってたんだなぁ。
俺、全然気づいてあげられなかった。
ごめんね。
君が苛ついてたの、仕事のせいもあったけど、最大の理由は睡眠不足だったのかもしれないね。
こんな風になるまで仕事しなくてもいいのに…。
でもがんばっちゃうのが君なんだよね。
きっと毎日ほとんど寝ずに仕事してたんだろうなぁ。
君が仕事大好き人間なのはよく知ってるつもりだったけど、ここまでとは思ってもみなかったよ。
今度からはこんな無茶しないように、しっかり見ておくね。
今はゆっくりおやすみ。
いい夢見てね。
大好きだよ。