お疲れぇー。
珍しいじゃん。
いつもは定時で上がるのに、こんな時間までいるなんて…。
えっ…書類の不備…?
あー…お前が直しといて。
俺は俺で忙しいんだって。
見れば分かるだろ。
(溜息)はぁ…。
で、どこを直せって?
じゃぁ、これ終わったら直すから、そこ置いといて。
はぁ!?
『今すぐ直せ』って…。
なんでお前に命令されなきゃいけないわけ?
(舌打ち)チッ
めんどくせ…。
ん…?
おかしいな…。
これ、不備じゃないと思うんだけど…。
なぁ……
不備になってないと思うけど。
………っ!
ちょっと、ここ、職場だよ。
抱きついちゃダメだよ。
『少しだけ』って…。
ダぁーメ。
ほら、離れて。
いい子だから。
ね?
このフロアには俺と君しかいないけど、誰かに見られちゃうかもしれないよ?
そしたら、俺たちが付き合ってるのバレちゃうけど、それでもいいの?
イヤでしょ?
それなら、離れて。
そんな
俺だって、ほんとはくっついててほしいんだから。
『付き合ってること、
俺も我慢するから。
ね?
(溜息)はぁ…。
今すぐにでも言いたいなぁ…。
『俺の彼女です!』って。
そしたら、会社でもイチャイチャできるのに…。
分かってるって。
でも、君を
気付いてないだろうけどさ…。
最近目に余るのは、君が教育係をしてる新人ね。
距離、やたら近くない?
見ててハラハラするんだけど。
今日とかキスしそうなくらい顔近かったじゃん。
すぐに
『俺の彼女なんだから手出すな』って。
アイツ、君が好きなのバレバレ。
全身から大好きってオーラが出てるんだよ。
そりゃ、見てれば分かるよ。
同じ男だからね。
ねぇ、ちゃんと俺のこと好き?
ほんとに?
…なら、キスして?
大丈夫。
この時間は警備員さんの
ほぉーら、早く。
あんまりモタモタしてると警備員さん来ちゃうよ?
(触れるだけのリップ音)
あぁ……家じゃないのが
今すぐにでも君を
『抱きしめたらいいじゃん』って…。
抱きしめたら離したくなくなるの分かってて言ったでしょ。
もぉー!
…そんなところも、かわいくて好き。
(警備員が現れる)
ヤバっ!
警備員さん来た。
まだ
ここに隠れてて。
大丈夫。
あっちからは死角で見えないから。
『しぃー』だよ。
いいね?
(警備員に向かって)お疲れ様です。
もうすぐ終わりますので…。
いつもすみません。
(警備員が去る)
………出てきてもいいよ。
(溜息)はぁ…。
びっくりしたぁ…。
(笑いながら)ちょっとドキドキしたね。
ねぇ。
仕事、あとどれくらいで終わりそうなの?
『あと少し』?
そっか…。
俺?
俺は今日の仕事もう終わってるよ。
珍しく
君が残業するから残ってただけ。
こんなかわいい子を遅い時間に1人で帰らせるわけないでしょ?
帰り道に襲われるかもしれないからね。
俺が守ってあげないと…。
(笑いながら)こらこら。
抱きつくの我慢って言ったでしょ。
また警備員さんが来ちゃうかもしれないよ。
ほら、仕事終わらせておいで。
やる気出ないの?
んー……じゃぁ、いいものあげる。
ちょっと屈んで。
(触れるだけのリップ音)
やる気が出るおまじない。
少しはやる気出た?
なら、よかった。
もう少しだけ、がんばっておいで。
待ってるから。