【キーボードを打ってる音】
【部屋のドアをノックする音】
どうぞー。
あれ?
お
あぁ~、飲み会に行くって言ってたっけ。
ごめん。忘れてた。
帰りは遅くなるの?
そっか。分かった。
あんまり遅くなるようだったら連絡して。
迎えに行くから。
『いらない』じゃないよ。
このあたりでも、最近不審者増えてるって言ってたじゃん。
遅い時間に、こんなかわいい子が1人で歩いてたら『どうぞ襲ってください』って言ってるようなもんだよ。
(溜息)はぁ…。
…このままじゃ、
じゃぁ、時間決めよう。
飲み会の終わりが10時を
これで、どう?
うん。約束ね。
イヤだからって、連絡しなかったら、あとでどうなるか分かってるよね?
ふふ。
それなら、いいんだけど。
ん?
(匂いを嗅ぐ)
香水つけてる?
この匂い、知らないなぁ…。
へぇー。
新しい香水なんだ。
この匂い、好き。
前使ってたのも、いい匂いだったけど、この匂いもいいね。
かわいい君に
でも、どうして今日つけるの?
前の香水、まだ残ってたよね?
…ねぇ、さっきから全然俺の目見て話そうとしないの、どうして?
何か後ろめたいことでもあるの?
…もしかして……今日の飲み会、男もいる…とか?
あからさまな、その反応…。
君って、ほんとに正直者だよね。
俺っていう彼氏がいるのに、他の男に
『違う』?
ほんとに?
一応、言い訳聞いてあげる。
納得するかは、
(相槌数回打つ)
そっか…。
昨日、前の香水落として
いいから!早く!
この香水の匂い、消してきて。
じゃなきゃ、飲み会行かせない。
最初にこの匂いを満足いくまで
『聞いてない』って、当たり前じゃん。
今、俺が決めたんだもん。
俺より先に他の男を満足させるわけにはいかないの。
絶対に!
『嫉妬?』って……そうだよ…嫉妬だよ。
こんなに嫉妬するくらい、君のことが大好きなんだよ。
この匂い、ほんとに君に合ってて、君の魅力が何倍にも
今まで君を意識しなかった男も、この匂いを
冗談じゃないよ。
ほんとだって。
だから、お願い。
お風呂で匂い消してきて。
…匂い消してくるつもりはないんだね?
じゃぁ、俺にも考えがあるから。
君の今つけてるネックレス、貸して。
いいから、早く。
後ろ向いてて。
俺がつけてあげる。
よっ……と。
はい、できた。
気付いた?
この間一緒に買いに行ったペアリングの俺のヤツ。
君の指には明らかに大きいサイズだから、男物って
これで多少の虫よけにはなるんじゃない?
あっ、そろそろ時間でしょ?
早く行かないと遅れるよ。
忘れ物ない?
財布持った?
携帯は?
ん、じゃぁ、いってらっしゃい。
あっ!待って!
大事な物、忘れてた。
ちょっと俺の前まで来て。
すぐ終わるから。
ほら、おいで。
(キスマークつけるリップ音)
はい、これで準備完了。
怒らないでよ。
見えるところにキスマークつけたことは
……ごめん。
だって、指輪持たせてても不安だから。
こんなところにキスマークがついてれば、
それだけ君が魅力的だから心配なの。
俺の気持ちも分かってよ…。
(触れるだけのリップ音)
こんなの、ズルいよ…。
君からのキスと『大丈夫』って言葉で、ほんとに大丈夫って思えちゃったじゃん…。
君のこと、信じてるから。
誰にもお持ち帰りされずに帰ってきてね?
君からの連絡、大人しく待ってる…。
……いってらっしゃい。