うわっ…もうこんな時間…。
もうすぐ終電じゃん。
先輩。
起きてください。
俺、終電の時間なんで、帰りますね。
楽しかったです。
『ん~』って、分かってるのかな?
まぁ、いっか。
…じゃぁ、帰りますね。
あの……先輩…。
俺、帰るって言ってるんです。
服
このままじゃ、いつまで
『ヤダ』じゃないって…。
俺の
【雷の音】
あっ…雷…。
そういえば、夜から雷雨って今朝天気予報で言ってたっけ…。
傘、持ってないや…。
まぁ、コンビニで買えばいっか。
ほら、先輩。
手、離してください。
雨が降る前に帰りたいんですよ。
…ねぇ、聞いてます?
【さっきより大きめの雷の音】
ちょっとずつ近づいてきてる…。
ヤダなぁ…。
雨降る前に帰りたいなぁ…。
先輩、手、離してってば!
そんなにしがみつかれたら、俺、帰れないですって。
【土砂降りの雨音】
あちゃ~…。
遅かったか…。
それにしても、すっごい
このまま帰っても
ん?
先輩、
…もしかして、雷が怖いとか?
そうですよね。
先輩に限って、そんなわけないですよね。
【近くに落ちた感じの雷の音】
うわっ!!
ビビった…。
めっちゃ大きい音…。
今のはかなり近かったですね。
…先輩?
固まっちゃってますけど、大丈夫ですか?
……先輩、やっぱり雷苦手なんでしょ。
さっきから外がピカッって光る
言っちゃった
誰にだって苦手なものはありますからね。
先輩が雷が苦手だからって、俺、馬鹿にしたりしませんよ。
俺だって、苦手なものあるし…。
俺の苦手なもの?
ありますよ。
でも、言ったら先輩絶対笑うから言いたくないです。
…ほんとに、笑ったりしません?
約束ですよ?
……犬。
ほら、笑ったっ!
だから、言いたくなかったのに…。
きっかけは
小さい頃に近所で犬飼ってる家があって、興味本位で近づいたらガブッと噛まれて…。
甘噛み程度で、傷とかもなかったんですけどね…。
それがトラウマになって、今も犬が苦手なんです。
【近くに落ちた感じの雷の音】
また落ちた…と思ったら、停電か…。
ちょっと、先輩。
そんなに必死になって、しがみつかないでくださいよ。
ブレーカーあげてくるんで、少し離れてくれませんか?
『行かないで』って…。
もしかして、雷だけじゃなくて、暗いのも苦手?
(小声で)…ほんと、かわいい。
【スマホをタップする音】
はい、ライト付けたから、少し怖くなくなったでしょ?
どこにも行かないから。
俺は先輩に近くにいます。
『嘘!』って…。
俺がいつ先輩に嘘
どうしても信じられない?
なら、手、
そしたら、俺がどこにも行かないって安心できるでしょ?
ふふ。
そんなにギュッと
ねぇ、先輩。
こんな時だけど、俺の相談に乗ってもらえません?
恋愛相談なんですけどね。
俺、好きな人がいるんですよ。
俺より年上で、仕事できて、かっこよくて、周りからの信頼も厚くて…。
でも、どうがんばっても、俺は男として見てもらえてないんです。
どうすれば男として意識してもらえるようになりますか?
(相槌数回打つ)
いきなりハグって…。
そんなことされたら、引きません?
まぁ…意識してもらうには、それくらいしなきゃいけないかもだけど…。
いきなりハグかぁ…。
じゃぁ、例えば、俺が先輩にいきなりハグしたとして、引いたりしません?
…引かないんですか!?
なんで?
『かわいい後輩だから』、ね…。
そっか…。
でも、引かないなら、いいよね?
(先輩を抱きしめる)ギュー
びっくりしました?
ふふ。
大成功かな。
俺が好きなのは、先輩です。
ずっと好きでした。
先輩がびっくりするのも、無理ないですよ。
全然俺の気持ちに気付いてくれないんですもん。
どんなに好きってアピールしても、先輩スルーするし…。
俺、すっごく不満だったんですから。
でも、これからはどんどん
男として見てもらうために。
(おでこにキス)
今は、おでこで我慢してあげます。
ほんとは、
……ねぇ、先輩。
今日、俺、先輩の家に泊まってもいいですか?
絶対何もしないって、約束しますから。
先輩、雷と真っ暗なの苦手でしょ?
俺、どっちも怖くないから、少しでも先輩の
今朝の天気予報で、この雷雨も
明るくなったら、ちゃんと帰りますから。
ね?
それまで一緒にいましょ。
ふふ。
先輩、言ってることとやってること、全然違くてかわいい。
だって、『ヤダ』って言いながらも、めちゃくちゃ俺にしがみついてるんだもん。
大丈夫ですよ、先輩。
怖い思いなんてさせないから。
…俺がずっと