もっと男を磨くことを決心した近所の男の子(完)

(姉ちゃんの家の間で待ち伏せ)

やっと出てきた…。

えっ……あぁ……うん。
朝からずっと待ってた。
汗だくなのは、そのせい。

体調悪くないって。
心配してくれてありがと。

……何の用事もないのに、凸ったりできないよ…。
おばさんに気遣わせちゃうし、迷惑になるじゃん…。

そんなことなくっても、俺は気にしちゃうの!

……今日……今から、帰るんでしょ?

その手に持ってる荷物、持つよ。

いいから。
持たせて。

…駅まで送ってく。

時間は平気。
予定ないから。

(2人、歩き始める)

…別に、不機嫌じゃない。
ただ、寂しいだけ…。

また離れ離れになっちゃうんだもん…。
俺も早く大人になりたいなぁ…。

…だって、大人になれば姉ちゃんに会いたい時に会いに行けるでしょ?

そうでもないの?
ほんとに?

……そっか…。
仕事で忙しくなると、逆に会えなくなるのか…。

でも、今よりは会えるよね?
ちょっとしか会えないとしても、会いたくなったら会いに行けるじゃん?
タクシーぶっ飛ばして。

(ドヤァな感じで)お金のこととか気にしなくてもいいように、いっぱい稼ぐ予定だから大丈夫。

それはそうと、姉ちゃん、何で俺からの連絡全部既読スルーしてたの?
普通にひどくない?

俺、姉ちゃんからの連絡待ってたのに…。

『それは…』、何?

(相槌数回)

『なんて返せばいいか分かんなくなっちゃったから』か…。

姉ちゃんを困らせるつもりで告ったんじゃなかったんだけど、結果的に困らせちゃって、マジでごめん。
でも、少しは俺のこと弟としてじゃなくて、男として意識してくれたってことでいいんだよね?

……嬉しい…。

とはいえ、答えはまだ出てない……ってことで、合ってる?

ん。
分かった。

じゃぁ、今はまだ答え出さなくていいよ。
もっとゆっくり時間かけて考えて。

俺にも時間がまだ必要だったみたい。
男を磨く時間が…。

姉ちゃんに告った、あの時……1秒でも早く姉ちゃんの隣を独占したい気持ちが先走りすぎてて、余裕なさすぎた…。
ちょっと冷静になれば分かることなのに、それにも気付かないくらい焦ってた。
そんなので、「男磨いてきた」とか、どの口が言うんだって話だよね。
ほんともう、全部…全部かっこ悪い…。
ダサすぎ、俺…。

もし、さっき、姉ちゃんにOK貰えたとしても、俺が待ったかけたと思う。
今はまだ、姉ちゃんの隣にいるのは(相応ふさわ)しくない。

これから、どれだけ時間がかかるか分かんないけど、姉ちゃんが即答できちゃうくらい内面も外見も男を磨き切った、何もかも兼ね備えためちゃくちゃかっこいい男になる。
で、姉ちゃんの隣にいるのに(相応ふさわ)しいって自信をもって思えたら、また告白する。
その時まで、この間の返事は保留ってことで……いい?

(駅に到着)

(耳元で雄っぽく)…心配しないで?
姉ちゃんが他の男に取られたとしても俺が奪いに行くから。

(いつもの彼に戻って)はい。
荷物。

家に着いたら連絡して。

ダーメ。
ちゃんと無事着いたか心配なの。

ね?
お願い。
連絡して?

じゃぁ、気を付けてね。
バイバイ。